「撮れば撮るほど、知れば知るほどにとりこに」トライアスロン写真家竹見脩吾さんに聞いた/加藤友里恵
スポーツにはさまざまなドラマがある。 主役はプレイヤーのみならず、それを支える関係者、審判、そして観客。一瞬一瞬、立場は違えども心に刻まれるドラマがある。 私はトライアスロンの魅力をもっと多くの方々に伝わってほしいと願っている。 Do(自らやる)スポーツ要素が多いトライアスロンなので、トライアスロンをやっている人はトライアスロンが好きだ。 しかし、トライアスロンをやっていない人はテレビ放映も少ないため観る機会、触れる機会が少ないと思う。 私としてはスポーツの中でも【かっこいい】トライアスロンを多くの人に触れてほしい… 日々そんなことを思っている中、先日、日本トライアスロン連合のオフィシャルカメラマンでもある写真家、竹見脩吾さんの写真展に伺った。 企画展名はずばり、トライアスロン報道写真展「Triathleteトライアスリート-限界のその先へ-」。 トライアスロンだけに突出した写真展だ。 ちょうど1年前、日本トライアスロン連合のフォトギャラリーではじめて竹見さんの写真を見た。正直なところ、今までは『この写真いいな!』と思っても、写真家さんのお名前を知るまでにはいたらなかった。 しかし、竹見さんの写真をみた瞬間、『この写真かっこ良すぎる!誰が撮っているのか知りたい!』と感動したのを今でも覚えている。 写真展でも、【トライアスロンの魅力】、【アスリートの魅力】、アスリート、観客、マーシャル、関係者、自然が一体となる【トライアスロンの一体感】が1枚1枚の写真から伝わってきた。 聞くところによると、トライアスロンを撮り始めてからすでに10年以上とのこと。それを知り、さらにファンになった。 今回は竹見さんに写真家としてのトライアスロンの魅力、今後の夢などについてお話しを伺った。 -10年以上も前からトライアスロンを撮っていたと伺ったのですが、撮りはじめのきっかけを教えてください 竹見さん 一番初めは、勤務地だったカナダ・バンクーバーでお会いした高谷正哲さん(現在、日本トライアスロン理事)にトライアスロンという競技を撮ってみないかと誘われたのがきっかけでした。 それまではトライアスロンのことはあまり知りませんでした。はじめて撮った時は、『まさにこれだ!』ビビビ!と電流が身体中に流れるような刺激的な感覚を今でも覚えています。競技をもっと知っていけばかなりかっこいい写真が撮れるスポーツだなと素朴に思いました。 -私自身、トライアスロンを魅せるスポーツとしてもっと浸透すれば良いのに…と思っているのですが、竹見さんはどう思われますか。また、写真家として、トライアスロンの魅力を教えてください。 竹見さん 私もトライアスロンこそもっともっと日本でメジャーになるべきスポーツだと私も思っています。箱根駅伝や東京マラソンのように気軽に観に行けるスポーツの1つですので。写真家としての目線でも、トライアスロンは魅力のあるスポーツだと感じています。サッカーや野球、バスケットボールなどはカメラを撮るエリアが決められています。トライアスロンは公道レース競技なので、自分の目で好きな撮影スポットを探せることができますし、オリジナリティーあふれる写真が撮れるのでカメラマンとしての腕の見せどころです! 自分の足で探して頑張れば頑張るほど写真に影響が出るスポーツ写真なので、スポーツカメラマンとしてとてもやりがいがあります。それと、写真と水の相性がとてもいいので、スイムでの水しぶきやバイクランでの汗、給水スポットでの水が躍動感にもなる『絵になる競技』です。私の役目としては、写真を通してどんどんトライアスロンの魅力を広めたいと考えています。 また、個人的には写真を趣味とされている方やこれからはじめる方にもトライアスロンはおすすめです。そして競技的な魅力は、選手たちは己と闘い続け、レース展開を大きく左右する自然とも対話し、戦略を瞬時に組み立て、その中で選手同士で駆け引きをします。最も過酷といわれるスポーツですが、沿道での歓声を受けながらすべて成し遂げたフィニッシュ後に、お互いをたたえ合う姿には心を奪われます。 -竹見さんの写真は、アスリートの魅力はもちろんですが、その場の雰囲気(観客、マーシャル、スタッフ含めて)が1枚の写真で伝わると感じています。撮るに当たって、一番考えているポイントはどういうところですか 竹見さん 一番に考えるのは、『写真に写る人がその写真をもらって喜んでもらえるかどうか』です。選手でも観客の人でもその瞬間のその写真をかっこいいとか、いい笑顔、などその時間を振り返って楽しんでもらったり、喜んでもらえることを一番に考えています。 -竹見さんのこれからの夢を教えてください。 竹見さん ワールドトライアスロンのカメラマンになりたいです。トップアスリートのかっこいい写真を撮るために、各国各地で追いかけたいと思ってます!トライアスロンは撮れば撮るほど、知れば知るほどにとりこになっていきます。オリンピックに特化したカテゴリーからトライアスロンを楽しむカテゴリー、そして子どものトライアスロン。最近ではスーパーリーグトライアスロンやT100という新しいトライアスロンの形も出てきました。それぞれのカテゴリーでいろんな表情が撮れるので、これからも喜んでもらえる写真を撮り続けていきたいと思います。 -最後に竹見さんにとって、『写真』とは 竹見さん 私にとって写真とは、私の記憶であり私の歩んだ人生の歴史です。自分が見ていいなと思った瞬間にシャッターを切り、その撮った場面は忘れません。『この時こういう撮影したんだな』、『この競技を撮ってたな』、『○○に行ったな』など、歳をとってから自分の人生を振り返る手段として、今から楽しみにしています。 -竹見さん、ありがとうございました。 ◇ ◇ ◇ 写真からも伝わる、竹見さんの『人を想う気持ち』が写真にあらわれ、写っている人のドラマが写されていると感じた。 写真展にはトライアスロンをやっている人、知っている人、全く知らない人、合計1万2873人が来場し、竹見さんのおかげでたくさんの方がトライアスロンに触れることができた。 竹見さんは『一瞬を切り抜く、一瞬をとらえる、その瞬間にかける想いがスポーツとカメラは一緒』だと話す。 これからもその一瞬にかけるトライアスリートの姿、人間ドラマを、一瞬のシャッターにとらえてほしい。 竹見さんの更なるご活躍と素敵な写真が見れることをファンとして楽しみにしている。 (加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン日本代表)