政府が個人情報「同意なし」で利用範囲拡大か、利便性と規制はどう両立すべき?
楽天・三木谷氏が提出した意見書、法改正による企業への影響
仮に規制緩和が実現した場合、本人同意を前提として組み立てていた既存システムの改修、事務負担の軽減、ビジネス機会の拡大など多方面に影響が生じることになる。 2024年4月にデジタル庁が開いた「第9回デジタル社会構想会議」では、会議の委員でもある楽天グループの三木谷 浩史会長兼社長(新経済連盟代表理事)が意見書を提出。 意見書では、特に取り組むべき事項として、「円滑で健全なデータ利活用を進めるための個人情報保護法の見直しの検討」を挙げた。経験や勘に頼らず、データを基に意思決定をするデータドリブン社会を構築する上で、データの利活用の促進が極めて重要となり、「規制強化は利活用の促進を阻む」と指摘。 その上で、「現在、個人情報保護委員会において個人情報保護法の見直しの検討が行われているが、現行法での効果や課題、運用状況のアセスメントを十分に行い、事業者を含むステークホルダーとのコミュニケーションを十分にとった上で、規制強化ありきの検討ではなく、円滑で健全な利活用が進むような検討を行うべき」と求めた。 この会議では、別の有識者から「特に公共分野においては、行政機関が別の目的ですでに保管している個人情報を利用する場合、規制の解釈を柔軟にすることで本人の利便性向上にもつながる」として、「国民が納得できるような具体的な利用シーンや運用方法を定義する必要がある」との指摘があった。 別の委員も「機微なデータにはなるが、災害の捜索時にスマートフォンの位置情報を使えば、多数の命を救うことにつながる。防災と絡めた議論も進めてほしい」と注文があった。 ほかには「個人情報についてのラベリングが複数あって非常に分かりづらく、混乱を招いているという問題も合わせて見直す必要がある」「日本は圧倒的にIT技術者が足りない一方、ルール制定のブレーンストーミングの段階から技術者を入れないと有効なルールができない。技術者の人材育成の優先順位を上げて取り組むべきだ」などの課題も挙げられた。