小銃発射事件にヘリ事故、性被害の「三大問題」に揺れる自衛隊 政府が防衛力の抜本強化を進める中、現場では何が起きているのか
陸上自衛隊で事件や事故、不祥事が相次いでいる。今年6月、岐阜市にある射撃場で、新隊員として訓練中だった自衛官候補生の男が小銃を発射し、隊員3人が死傷する事件が起きた。4月には第8師団長ら10人が死亡するヘリコプター事故が発生。昨年は女性隊員が訓練中に性被害に遭う事案が発覚し、事件化している。複雑化する国際情勢を踏まえて政府が抜本的な防衛力強化を図る中、最前線を担う自衛隊で起きた「三大問題」。組織の足元で何が起きているのか。現役自衛官はどう受け止めているのか。(共同通信防衛問題取材班) ▽若手隊員養成の場で起きた凶行 6月14日午前9時10分ごろ、岐阜市の陸上自衛隊日野基本射撃場で、訓練中に男性隊員3人が自動小銃で撃たれる事件が起きた。このうち菊松安親1等陸曹(52)=陸曹長に特別昇任=と八代航佑3等陸曹(25)=2等陸曹に特別昇任=が頭や脇腹に被弾し、病院に運ばれたが死亡。別の3等陸曹(25)は左脚に3カ月の重傷を負った。
殺人などの容疑で逮捕されたのは、自衛官候補生の18歳の男だ。射撃場は屋内型の施設で、この男は準備場所で待機していた際、「89式5・56㍉小銃」に実弾が入った弾倉を無断で装填。「動くな!」と絶叫した直後、指導役だった3人に向けて発射した疑いが持たれている。 任期制の「自衛官候補生」制度は2010年に導入された。若くて戦力になる自衛官を確保するのが目的で、募集対象は18歳以上33歳未満。陸上自衛隊の場合、入隊から約3カ月間にわたって基礎的な訓練を受けると2等陸士となり、その後1年9カ月間、自衛官として勤務する。 岐阜の事件で逮捕された自衛官候補生の男と、死傷した3人は、いずれも名古屋市の守山駐屯地に拠点を置く第35普通科連隊新隊員教育隊に所属。3人は候補生たちの指導役だった。射撃場での訓練で、八代さんは射撃前の候補生らの服装や銃のチェックに当たる「交代係」、菊松さんと重傷の3曹は射撃場内の弾薬置き場で候補生らに弾を渡す「弾薬係」として指導に当たっていたという。