3/4が日本製? 台湾で「日本の電車」が使われ続ける意外な理由
◆車両用意期間を1/2に短縮、コスト削減も
台湾では、このような大きな転換により、多くの電車が必要となりました。JR各社の電車を設計のベースにしたことで、通常、車両の設計から納入開始まで1年半から2年かかるところを、8カ月にまで短縮。また、走行機器を中心にJR各社や大手私鉄が採用している量産品を使用することで、コスト削減にもつながっています。
◆アフターサービスで、台湾も日本も得をする
日本製の車両に使われている走行機器は、東芝や日立といった日本の電機メーカーのものが採用されています。日本と台湾は地理的にも近いため、故障時には、欧米の電機メーカーと比べ短期間でのアフターサービスが可能なのです。 また、日本の鉄道車両メーカーや電機メーカー側からみると、アフターサービスを提供することで、車両納入時だけではなく、継続した収入が期待できます。 このように数多くの電車が走る台湾では、特急形電車は816両全て、通勤形電車は1424両中504両が日本国内、および日本メーカーの委託により台湾で生産されています。残りの920両は韓国製となりますが、東芝製の走行機器が使われているため、日本製の車両と非常に似通っています。このほか、支線で使われている66両の気動車は、全て日本から輸入したものです。 全ての車両を合わせると、3/4の車両が日本製となるため、台湾の鉄道ファンからは、「JR台湾」とも呼ばれています。 現在、東芝府中工場では、台湾国鉄向けに特急列車「自強号」で使用するための新型電気機関車、E500型を製作しています。完成した車両は台湾まで輸送され、整備が完了したものから順次、老朽化した現行のものと取り換えられて運用に入っています。台湾を旅行した時には、新型の赤い電気機関車の前で写真を撮ると記念になるかもしれませんね。 この記事の筆者:小林 小玉 プロフィール 台湾在住のライター、翻訳家。オーストラリア留学で培った英語力を生かし、大手百貨店や外資系企業でインフォメーション業務に携わったのち、出版業界に転職。旅行ガイドブックを中心に取材、執筆を続け、中国語留学を経て台湾に移住。2022年から通訳、翻訳家、コーディネーターとしても活動している。
小林 小玉