資産運用から事業承継計画まで…経営者が知っておきたい「ファミリービジネス」の重要ポイント【公認会計士が解説】
日本には数多くのファミリービジネスが存在します。しかし、よい状態で運営を継続し、長く利益を享受し続けるには、さまざまな留意点があります。経営者が知っておくべき、ファミリービジネスの基本について見ていきます。ファミリービジネスにくわしい、メガバンカー出身の公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
ファミリービジネスの「長所」と「短所」
非上場のファミリービジネスでは、一族のメンバーが株主として大きな影響力を持ちます。この影響力は、株式の過半数を持たなくても、取締役の多数を選出できることに基づいています。 ファミリービジネスの長所は「長期的な視野での経営」と「迅速な意思決定」にあり、これは一族の結束力の強さによるものです。 しかし、世代が進むと、一族内の結束力の低下により、その影響力は薄れがちです。とくに三世代目以降は、家族の絆が弱まり、創業者の理念が失われることがあります。 また、外部環境の変化は、長年にわたるビジネスモデルの価値の低下をもたらし、ファミリービジネスの継続を難しくします。
利害対立を示す「スリーサークルモデル」とは?
スリーサークルモデルは、ファミリービジネスのメンバー間の潜在的な利害対立を分析するフレームワークです。 「事業を営む会社の株主」「創業家の家族」「企業経営」の3つの要素が組み合わさり、7つの立場を生み出して、それぞれの立場からの利害対立を明らかにします。この分析を通じて、ファミリービジネスが遭遇しうる問題への対処法を見つけることができます。 (1)事業承継者 → 配当より再投資を推進。 (2)経営に関わらない血族株主 例:嫁いだ姉 → 再投資より配当を要求。 (3)非一族で株式を保有する経営陣 → 一族価値に対する理解が低い場合、狭義の企業価値経営に偏り、一族価値を軽視する経営の可能性がある。 → MBOの受皿となる可能性がある。 (4)非一族で非経営の株主 例:取引先株主、元従業員・経営幹部 → 経営方針でもめる場合には買取りの対象 (5)経営に関与しているが、株式を持っていない周辺一族 → 事業承継については他人事。 → 責任ある株主行動についての意識が低い。 → サラリーマン意識になって短い時間で働き高い給与を求める。 → 社会関係資本(ソーシャルキャピタル)への意識が低い。 → オーナーシップをもっておらず、一族の一体性の仕組みから外れてしまう可能性が高い。 (6)株式を持たない姻族および未成年血族 → 一族事業での就業や相続により将来の株主になるチャンス。 (7)非一族で非株主の経営人材 → 一族についての価値観や一族の一体性が経営にもたらす安定化効果などについて啓蒙を必要とする。 たとえば、ファミリービジネスの利益をどれだけ配当に使い、どれだけを留保するかは、一般的な議題です。この際、家族、株主、経営の役割が重なる長男((1))は、ファミリービジネスの将来を見据えて配当を抑え、留保を増やしたいと考えます。 しかし、家族と株主の立場の長女((2))や、単に家族である長女の夫((6))は、経営に関与しないため、より多くの配当を望むことがあります。これにより、経営に携わるメンバーと、そうではないメンバーの間で利害が対立します。
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