内川の2000本安打を支えた「MLBでも首位打者を取れる」右打ち技術
内川のバッティングの素晴らしさは、天下一品も右打ちに代表される、その巧みなバットコントロールにある。内川はポイントの幅が普通の打者より数センチ以上も広いと言われている。インサイドもアウトコースも自由自在にライト前へ落とすことができる。インサイドのボールにはヘッドを遅らせてスライス回転を与え、逆にアウトコースのボールには、その外側を意識して叩きフック回転を与える。もう職人の域である。 しかも、バットが最短距離から立って出てくるからミスショットが少ない。 名将であり“3冠王”を獲得している稀代のバットマン、野村克也氏が、「右打者は左打者に比べて一塁より遠い。しかも、変化球への対応が格段に難しい。歴代の通算打率が左打者が多いのは、そういうことだ」と、語っていたことがある。内川は、2008年に右打者としては1999年のロバート・ローズを抜き、歴代最高打率となる.378をマークして首位打者を獲得している。右に打てることが、その理由のひとつだが、配球を読んで狙い球を絞っていくスタイルではなく、打席では「ストライクは全部振るつもり」で準備している。 努力によって作られた確固たる技術に裏づけられている。 一方、父が監督を務めていた大分工業高校時代はアーチストだった。状況に応じて思い切り引っ張って一発も打てる。通算200本塁打に残り22本。昨年の楽天とのクライマックスシリーズファイナルステージでの4試合連続アーチ、横浜DeNAとの日本シリーズ第6戦での9回一死の走者無しの土壇場からの起死回生の本塁打は記憶に新しい。まるで鋼とスポンジが合体したようなバッティングが魅力なのだ。 WBCには3度出場した。初出場となった2009年の原監督に率いられてイチローが中心にいたWBCでは世界一メンバーの一員として存在感を示した。2度目の出場では、ダブルスチールで痛恨のミスを犯したことで注目を浴びてしまったが、メジャーリーグスカウトは、そのバットコントロール技術に早くから目をつけていた。当時、アリーグのスカウトは「バットコントロールの技術とバットスピードはイチローに劣らないんじゃないか。守備力も高い。遠くへ飛ばすパワーも十分にある。チームによってはフィットする」と語っていた。 3度目の出場となった昨年のWBCでは、代打要員となっていたが、その頃、「メジャーでも内川は首位打者が取れる」と断言していたのは、フィリーズの大慈彌功・環太平洋担当部長だ。 「あれだけのバットコントロール力があれば、動くボールなど苦にしない。ストレートにも強い。ヒットを打ちたいときに打ちたい場所に打てる打者。私は、今すぐメジャーにいっても首位打者を取れると思う」 メジャーの外中心の配球と全盛の動くボールは内川がヒットを打つ絶好の環境なのだ。