ラジオパーソナリティー、大学講師…声に救われ 声で励まし DJ・HAGGY 二兎を追う
■今度は自分が
それでも夢を諦められず、30代で「しゃべり」の道へ。平成8年、開局したばかりのレディオ湘南から出演を打診された。朝の情報番組を担当し、湘南の情報を発信し続けた。
早朝に起床し、江ノ島電鉄の始発に乗って出勤した。スタジオはガラス張りで、「今度は自分がリスナーを励ます番。学校に通う子供や勤務先に向かうサラリーマンに手を振りながら、しゃべり続けた」。
文字通り、雨の日も風の日も。軽妙な語り口は少しずつ人々に浸透していった。
テレビの人気情報バラエティー番組で江ノ島特集が組まれた際には、名所・名物と並び「人気ディスクジョッキー」として紹介され、番組が5555回を迎える際には湘南モノレールが「DJ・HAGGY号」を運行。「ハギーさんの声」は、いつしか「湘南の声」となった。
令和2年3月、レディオ湘南での出演番組は6056回で終了した。ギネス申請の話も出たが「そうするとまた忙しくなっちゃうから」と笑う。
昨年には、著書「1歳で両親に捨てられた僕が湘南でラジオDJになった話」(文芸社)を出版。決して恵まれていたとはいえない幼少期も含め、半生をありのままにつづった。
ラジオのリスナーや大学で講義を受ける学生らから悩み相談を受けたときは、自身の経験と重ね合わせ、こう答える。
「右に行ってダメだったら、左に戻ればいいじゃん。僕はそうして、これまで生きてきた」
軽妙でありながら優しさがにじむ。そんな語り口は今も健在だ。(宇都木渉)
■DJ・HAGGY(でぃーじぇい・はぎー)
本名・萩原浩一(はぎわら・ひろかず)。年齢非公表。湘南育ちでラジオパーソナリティーやイベント司会、大学講師など幅広く活動。地元に深く通じ、周囲からは「湘南の歩く百科事典」と呼ばれている。雑誌「ラジオ番組表」(三才ブックス)の「読者が選んだ好きなDJランキング・コミュニティ放送部門」で平成22年から7年連続で1位に選出された。
■地域密着のコミュニティーFM、全国に341事業者