元NHK藤井康生アナ 故・北の富士さんと実況席での思い出「ごめん、見てなかった」 その言葉の真意は
大相撲の実況などで知られる元NHKアナウンサーでフリーアナの藤井康生(67)が18日、TBS系「ゴゴスマ~GO GO!smile~」(月~金曜1・55)にリモートで生出演し、11月に82歳で死去した元横綱で相撲解説者の北の富士勝昭さんとの思い出話を披露した。 北の富士さんは現役時代に幕内優勝10回。70年初場所後には、ライバル玉の海と同時に横綱に昇進し、“北玉時代”を築き上げた。引退後は九重親方として後進の指導に当たり、千代の富士、北勝海の横綱2人を育てた。 また大相撲中継では、解説を務めた北の富士さんと名コンビとして親しまれた。この日は都内の八角部屋で、「北の富士さんをしのぶ会」が開かれた。 親方としての北の富士さんについて問われると、藤井は「力士を目の前で指導もするんですが、ちょっと目を離して自由な時間を与えるとか、厳しくしてみたり、緩めてみたりと、非常に巧みな親方だったと思いますね」と回想。「一度、3回目か4回目、九重部屋にお邪魔して朝の稽古を見させていただいた時、北の富士さんが藤井さん、ちょっと見ててとしばらく席を外されるわけです。席を外してどこへ行ったのかなと思っていたら、1時間くらいして戻ってこられて、汗びっしょりで。何とジョギングに行ってきたというんですね」と明かした。 藤井は「稽古場をほったらかし…と言っては失礼かもしれませんが、私のような人間に任せておいて、いなくなってしまうという」と、北の富士さんの思い切った言動に驚いたことを振り返った。 後日、北の富士さんは藤井にこう言ったという。「“ずっと俺が3時間も4時間も稽古を見ていたら、力士も緊張の中でずっとやらなければならない。時には心を緩めながら、気持ちも緩めながら稽古をすることも必要なので、時々こういうこともやるんですよ”とおっしゃっていました」と懐かしんでいた。 現役時代は休場した場所後にハワイでサーフィンをしたことが物議を醸したり、断髪式後にはタキシードに着替えて土俵上で歌を披露したりと、奔放な言動が話題になった北の富士さん。藤井は「そもそも粋というものが体に染みついて。物腰であったり、言動であったり、たたずまいであったり、すべてが粋なんですよ」と評した。 また「それだけ心に余裕があるんでしょうし、懐が深いというんでしょうかね。自由という言葉を使ってはいけないかもしれませんが、他の大相撲界の師匠とは異なる師匠だったなと思います。だからこそ2人の横綱が誕生したのではないかなと思います」とも話した。 中継中には、弟子の舞の海による解説に「違う」とダメ出しをすることもあり、視聴者をひやひやさせた。それでも、間に入った藤井は「私は北の富士さんとご一緒できる方が楽でいいなと」感じていたという。「何を話を向けても、どんな話題を持って行っても、自由に返ってくる」。また、「“いい相撲でしたね”と言うと、“ごめん、見てなかった。向正面の舞の海に聞いて”ということを平気でおっしゃるという」と、生放送中のやりとりを振り返った。「生放送でこんなことをできる方は、そういらっしゃらないですから。見ていないわけはないんですが、そういうおもしろさを放送の中に取り込んでいくという」と、北の富士さんの真意を読み解いていた。