「千代田国際」が校名からあえて「国際」を外す理由、学ぶことの本質を見事に突いていた!
● 生徒と教員が本気になって取り組む ――今日の「探究」の失敗の原因は、それが“手段”であるのに、“目的”だと思い込んでいることにあると思います。この学校で、世の中の「探究」の間違いを全部正してほしいです。 木村 研究指導に関わる教員は、指導者というよりもチームメンバーの一員というイメージですね。千代田でやっている研究活動は、主役はもちろん生徒ですが、教員も一緒に楽しみながら学べるすてきな活動です。生徒と教員が本気になって取り組んだ活動で世界の幸せに貢献できる学校、日本に一つくらいはこんな学校があってもいいのではないか。広尾学園での経験も踏まえて、生徒と共に千代田で実現していきます。 ――研究テーマを生徒はどのように選ぶのでしょう。 木村 生徒が研究テーマを決めるときは、自分がやりたいことであることの大前提として、それが(学術界も含めた)社会から求められているか、ある程度の実現可能性がありそうか、ということも考えます。 ――新しいことを始めると、保護者からいろいろと言われませんか。 木村 「研究活動をしていて大学受験は大丈夫ですか」と聞かれることはありますね(笑)。研究活動を進めることは大学受験においてもむしろ近道です。私も初めて担任になった時、生徒と面談しながら、「得意な生物は点数が取れているから、今はもう生物は勉強せずに苦手な英語をもっと頑張ろう」とか、「モル計算でミスが多いから化学を頑張ろう」と、全教科できるようになるために、広く浅く掘ることを指導してきました。生徒からすると、点を取るために常に苦手なことばかりやらされ続ける。
● 学ぶことが楽しいと思えるように ――嫌なことをやらされ続けていると、全部嫌いになりかねないですしね。 木村 生徒が学ぶことを楽しいと思えるようにしたい。勉強が嫌いになってしまったらおしまいなので、苦手克服だけではないアプローチとして、狭くてもいいからまずは自分が好きなことや得意なことを徹底的に掘り下げる。そして、そこから横に掘り広げていくアプローチを研究活動と教科との接続という形で実現してきました。 ――そこで生徒の気付きがあると。 木村 深く掘っていく過程で、学ぶ楽しさが得られて、学び方も分かる。例えば、生物学が好きで、再生医療の分野で貢献していきたいという生徒は、研究を進めるうちに山中伸弥先生が初めてiPS細胞の樹立を発表した時の論文が読みたくなります。 学術論文は全部英語で書いてありますから、論文を読むために英語を学びたくなり、英語の授業を受ける姿勢が変わってきます。細胞の培養が始まれば、培養液を調整するためにモル濃度の計算が必要なので、理論化学について自ら学び始めるようになります。 このように、自分がやりたい生物の研究を進めるうちに、苦手なはずだった英語や化学もいつの間にかやりたいことに変わっていく。生徒の意欲を引き出していくことが学校の先生の役割です。教員が教科の枠を超えて生徒一人一人の学びのストーリーをつくるためにチームで取り組んでいく。これは意識的にやらないと実現できないものです。 ――それが世界への貢献にもつながっていくというわけですね。 木村 生徒たちには、ことあるごとに「世界の未来をつくるのは君たちだって本気で思っている」と伝えています。学校説明会でも「受験生を募集しているというよりは未来をつくる仲間を募集している」と伝えています。千代田ではこれからも、生徒たちが自分もみんなも幸せになる未来をつくるために必要な環境を追求し続けていきます。
ダイヤモンド社教育情報/後藤健夫