「千代田国際」が校名からあえて「国際」を外す理由、学ぶことの本質を見事に突いていた!
● 学ぶように遊び、遊ぶように学ぶ 木村 授業の在り方も、まず大前提を「楽しい」にしたい。楽しいにはいろいろありますが、入り口はファニー(funny)でいい。それをインタレスティング(interesting)の意味での「楽しい」に変えていけるように授業を構成する。生徒が学びたくて、毎日学校に来たくてたまらないような。そして、研究者や起業家が感じている楽しさ、すなわちエキサイティング(exciting)にまで昇華できたら最高ですね。 何をやるかは大学に入ってから考えればいい、今は受験だけ乗り切ればいいという考え方をすると、そのマインドを生涯引きずってしまいます。中高時代のマインドセッティングがとても大切なのです。 中高時代に、本物に触れながら本質を捉え、「エキサイティング」な楽しさへとつなげていきたい。千代田では、中高の学びが大学そして社会へと連続するよう、大学との連携はもちろんのこと、企業や自治体などともこれまで以上に協働していきます。 ――脱「学校教育」的なアプローチですね。一方で、今の大人が、自分が18歳の時に考えていたことが今実現できているのか。世の中が変化する中で、自分の考えていたことがいかに陳腐だったかを知るべきだと思います。つまり、何をやりたいのか・何をやるのかは、変わることが自然です。自分が「いかに在るか」がこれから求められることだと思います。
● 「自分はそんなにバカじゃない」 ――学校説明会のスライドの中で、「自分はそんなにバカじゃない」と言った子が印象的でした。 木村 あの子は数学があまり得意でないまま高校を受験したそうです。数学の問題が思うように解けず、「自分はバカなのではないか」と勘違いしていたそうです。本当はそんなことは全然ありません。 「完全数や暗号理論」も扱う本校教員である堀内陽介先生の数論のラボで3カ月くらい研究して、数学的な手法をいろいろと知り、数学に没入したことで、自分はこんなにも考えることができるんだと感じている。実際、前期の中間試験で8点だった数学の点数が、期末では80点を超えていました。すごいですよね!その過程で、自己肯定感も爆上がりしていくわけです。 ――まだ見ぬ整数の秘密を解き明かせ、というテーマですね。数学は生徒に誤解されている。 木村 特に数学はその傾向が強いと感じています。本校では、本物から入るということを大切にしていますが、例えるなら、おいしいハンバーガーを作るために、まずはおいしいハンバーガーを食べてみようと話します。 一般的には、数学は積み上げていかないと分からないと思われている。一次関数が分からないと二次関数が分からない。このように次の単元の準備をしているうちに高校数学が終わってしまう(笑)。それどころか、途中で数学を諦めてしまうケースも多いです。 おいしいハンバーガーを作りたいのに、何も知らずに突然レタス畑に連れて行かれて有機栽培の話をされたり、チーズは牛乳からできるからと牧場に連れて行かれて上手な乳搾りの仕方を学ばされたりするようなものです。各論ばかり詳しくて、だんだん本来の目的から離れていく。まず、「これからハンバーガーを作ります」と言ってくれれば、各論の意味が分かるのに、どこに向かって進んでいるのか分からないまま教科書をいくら読んでも理解が進みません。 初学の段階では誤解があったり間違いがあったりすることもあるかもしれませんが、探究の時間などを使って、今の世の中を動かしている現代数学から入ってもいいのではないかと思っています。まずハンバーガーを食べることから。そして、おいしい(面白い)となったら、それに向けて各論を積み上げていけばいい。そういう学びもあっていい。各論を学ぶ中で新たな気付きが得られれば、探究もさらに発展していくでしょう。 ――覚えるから考える、への転換ですね。循環型の学び。その際、教員が適切なタイミングで適切な教材を生徒に示すことも大切だと思います。 木村 はい。良い教材かそうでないかは初学者には判断できませんから。先生方には、内容が本質的でかつ生徒が面白いと思える教材を探し続けてください。そして、生徒が学びたいと思ったタイミングで、スッと出せるよう手元に用意しておいてくださいね、とお願いしています。