戦争の姿を変える?「中国製犬型ロボット」が意味するもの
「犬型ロボットが軍事演習に登場し、任務を遂行した。このことは、中国人民解放軍にすでに配備されたことを意味するのか、そして近未来の戦争を変えることを意味するのか」 「犬型ロボットを最初に開発したのは中国ではなく、アメリカだった。だが、アメリカは犬型ロボットが出す音が大きく、システムが複雑なため、犬型ロボットの研究開発を断念している。システム化を最初に実現したのが中国人民解放軍である」 中国メディアの解説がそのとおりなら、戦争に使える犬型ロボットの開発は、中国が先頭を走っている、ということだ。 ■「軍民一体」となって武器ビジネスも目論む? ここで気になることがある。中国で犬型ロボットを開発してきたのは、軍だけではない。大手の家電メーカーも手掛けてきた。購入したのは主に独り暮らしの人で、主にペットとして側に置いている。高齢者や、障害を持つ方々に、人気を集めている。 この犬型ロボットを販売している中国の大手家電メーカーを、アメリカ国防総省は軍事関連企業に認定している。つまり、この家電メーカーが中国人民解放軍の先端技術開発を支援するというのだ。中国の産業界において、「軍民一体」が当たり前ならば、この犬型ロボットの開発も例外ではない。中国らしいといえば、中国らしい。 それにしても、軍事情報を公表したがらない中国はなぜ、今回、この犬型ロボットを、国営メディアを通じて紹介したのだろう。ポイントは、カンボジアとの合同演習で使ってみた、ということだ。冒頭で紹介したように、影響力を発揮しているカンボジアで行なった合同軍事演習は、新型ロボットをテストしやすい環境があった。つまり、中国国内ではなく、環境の異なる中で、使えるかどうか。そして、成功した。だから国営メディアが報じたというわけだ。 同時に、中国の軍事技術の高さを、海外に向けてアピールできる。国外への武器輸出・武器販売というビジネスにおいても、今後、期待できる商品になるという計算も働いているかもしれない。大規模な兵器に比べれば、値段も張らないはず。それが犬型ロボットだ。
■◎飯田和郎(いいだ・かずお) 1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。
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