資生堂株は天井知らず? 話題さらう大化け相場、突き動かす刺激材料とは
プレステージ化粧品の「威力」
プレステージ化粧品は、高価格帯の化粧品を指す。資生堂が3月5日に発表した新中期経営計画の説明会で取り上げたことから有力アナリストの注目度がぐんと高まった。 例えば、みずほ証券は3月27日付の分析リポートで、世界最大の化粧品会社であるロレアルグループの毎年発表している世界の化粧品市場の調査内容を紹介しているが、それによれば、2017年の世界の化粧品マーケットは4~5%増と伸び率が高まり、中でも「成長著しいのが高価格帯」で、2017年は8.5~9.5%伸びた、という。 この火付け役となっているのが中国人。前述のインバウンド需要増とも関連するが、世界の観光地に広がる中国人のプレステージ化粧品の物色ブームは、中国人以外にも拡大しているようだ。 グローバル景気の拡大によるGDP(国内総生産)の伸びを背景に、世界の中・上流階級の人口が将来的に増えていく方向にあり、プレステージ化粧品の伸びしろは大きい。 「今後、数年間は、プレステージ化粧品で勝つことが、当業界で相対的に成長率が高くなることにつながるのである」と、みずほ証券は指摘。プレステージ商品で優位に立つ資生堂は「つぼみは、まだ開いたばかり」とも強調している。
攻撃的な新中期計画
もう一つ、見逃せないのが、前述した資生堂の新・中期計画の内容だ。 同計画では2020年12月期の売上高目標として1兆2000億円を掲げたうえで、同時に困難ではあるが挑戦する高い目標を意味する「ストレッチ目標」では1兆2800億円超を打ち出した。営業利益は、基本計画では1200億円超、ストレッチ目標だと1300億円超。売上高営業利益率は10%超となる計算だが、今12月期の業績見通しでは売上高1兆3300億円に対し、営業利益は900億円で、営業利益率が8.7%。相当に攻撃的な中期プランであることは明瞭だ。
有力証券の株価目標値超えるケース相次ぐ
プレステージ化粧品と、新中計という市場関係者のセンチメントを刺激するこうした2つの好材料が相乗効果となって株価の高騰劇を呼び込んだわけだが、ネックはないのだろうか。あえて言うなら、短期的な株価のオーバーシュート(行き過ぎ)が一つ挙げられる。2月下旬以降、大手証券が公表した資生堂の株価目標値を、その後、どんどん株価が上がっていたことから追い越す状況が相次いでいる。 ちなみに野村証券は6710円、大和証券が6140円、SMBC日興証券は7100円、みずほ証券が7000円をそれぞれ打ち出していたが、足元の株価はこれらをすべて上回ってしまった。まだ到達していないのは、JPモルガン証券の8000円、ゴールドマンサックス証券の7800円だが、それも視界に入り始めた。 しかし、ここまで上げてくると、スピード調整は当然、想定される。それを挟んだうえで、空前の8000円にトライするかどうか、ここからが正念場になりそうだ。 (証券ジャーナリスト・駿河一平)