【自閉症の息子を持つ記者レポート】能登半島地震~行き場のない障がい者たち~
私には重い知的障がいのある自閉症のひとり息子がいる。もし、南海トラフ巨大地震で被災したら、息子を連れて一体どこへ避難し、どう過ごしていけばいいのだろう?その術を探るべく、石川県輪島市へとカメラを持って乗り込んだ。
続く断水、寄り添い合う介護職員と施設利用者
元旦に発生した能登半島地震。その後の報道で「断水でトイレが使えない」という被災者の悲痛な声を聞いた。私はどうしても被災地で確かめたいことがあり、その取材のため12日の夕方輪島市に入った。
発災当日から、約30人の障がい者と高齢者、職員が避難をしていたのは、生活介護などで利用される福祉事業所。そこを「福祉避難所」にしていた。断水が続く中、介護職員がトイレを手伝うなど、厳しい環境でも寄り添い合いながら過ごしていた。
私には27歳になる一人息子がいる。重い知的障がいのある自閉症。彼は水とトイレに強いこだわりを持ち、風呂では1時間以上、ペットボトルを使って水遊び。トイレに入る回数は多い日で10回。使うトイレットペーパーの量は半端ない。もし、南海トラフ巨大地震が発災し、わが家が被災したら、一体どうしたらいいのだろうか?その術を知りたくて現地へ入ったのだ。
多動症、睡眠障害、泣き叫ぶ…避難所に馴染めない障がい者たち
輪島市では「福祉避難所」として26の施設と協定を結んでいたが、実際に開所したのは7か所のみ。地震で施設そのものが損壊し、介護職員も被災して離職していく人も増えていた。
4歳の自閉症の一人息子を持つ事業所職員の横田夫婦。一時、市役所へ避難していたが泣き止まない娘に周囲から「親が注意しろ」「親のしつけがなってない」と言われ止む無く市役所を出て、福祉避難所へ来たという。
法人のグループホームの個室で避難していた岩崎香さんと小学6年生の佑輝くん。自閉症で環境が変わるとウロウロ歩き回る「多動症」になかなか寝ない「睡眠障害」がある。昼夜が逆転してしまう睡眠障害には医師から処方された「睡眠剤」を使うが、佑輝くんも我が息子も効果は期待できない。
佑輝くんは車中泊のあと、ショートスティで利用し慣れた法人の施設へ父親が連れてきた。少しでも環境が良く慣れた場所へ先ず避難することを選択。そして「個室」を希望し、母親と2人で過ごしていた。