プーチンが4州割譲を求める最後通告、「完全勝利」目指すウクライナが迫られる「譲歩」の現実
■ 平和サミットは世界的に反ロシア包囲網を固める試み 「クレムリンは平和サミットについて世界的に反ロシア包囲網を固める試みとみなして、これを阻止する決意を固めている。プーチンの和平案は本質的にウクライナの降伏を要求しており、ゼレンスキー大統領を排除するものだ」(スタノバヤ上級研究員) ウクライナがドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソン4州とクリミアを放棄して中立を宣言、ウクライナ民族主義者(反ロシア勢力)が権力の座に就かないことを約束すれば、戦争を終結させるとプーチンは提案している。ゼレンスキー大統領が絶対にのめるはずがない提案だ。 「プーチンは長い間、幅を持たせるため要求の内容を明確にするのを避けてきた。今回、要求を発表したことで逆に今後の交渉の可能性を複雑にしてしまった。ウクライナが要求をすぐに受け入れるとロシア国民が本気で思っているかは疑わしい」(スタノバヤ上級研究員) ウクライナから強力な反撃があればプーチンは攻撃を中止するかもしれない。プーチンは腹の中で、大きな軍事力を投入することなくウクライナを降伏させ、ゼレンスキー大統領が退陣に追い込まれる状況を作り出したいと考えているとスタノバヤ上級研究員はみる。
■ ウクライナを“交渉”に引きずり込んで不安定化させる 「プーチンの当面の目標はウクライナを“交渉”に引きずり込んで不安定化させ、将来キーウがロシアの要求を受け入れるようにすることだ。そうすればロシアは軍事行動を継続する必要がなくなる。和平案には即時和平を望む人々を惹きつけ、西側の結束を崩す策略がある」(同) プーチンはウクライナに抵抗をやめさせることが勝利への大きな一歩になると考えている。バイデン、ゼレンスキー両氏の間にはすでに隙間風が吹き始めている。ウクライナへの米国の軍事援助のペースと規模、バイデン氏の平和サミット欠席にゼレンスキー氏は不満を募らせる。 バイデン氏とゼレンスキー氏は13日、ウクライナの国防力と抑止力を長期的に強化する合意に署名し、結束を強調してみせた。武器弾薬の提供、情報共有の拡大、ウクライナ軍の訓練、ウクライナの国防産業基盤への投資、強力で持続可能なウクライナ軍隊の構築を約束した。 しかしバイデン氏は戦争のエスカレートを恐れている。シンクタンク、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマーク・ガレオッティ上級研究員は、ベルリンを拠点にする経済メディア、bne IntelliNewsに「西側はウクライナについて真剣に話し合う必要がある」と寄稿した。