いまクラシック音楽界で勢いがあるのはこの3人! アジアから世界に飛翔した実力派たちの新作を聴く
絶対聞くべきアジアのアーティストがこの3人!
いま、日本や中国などアジア出身の音楽家が国際舞台で大活躍中。今回は人気と実力を兼ね備えた3人の音楽家たちの新譜を紹介しよう。 【写真6枚】いま最も勢いのある指揮者、ショパン・コンクールで優勝した中国人美女、アジアの音楽家が大注目 ◆世界初録音の歌劇 いまもっとも勢いのある指揮者といわれ、ヨーロッパのオーケストラからひっぱりだこの人気を誇るのが、2009年ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝した山田和樹。現在はバーミンガム市交響楽団の音楽監督を務め、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督兼音楽監督も務めている。 そんなマエストロがモンテカルロ・フィルとサン=サーンスの歌劇「デジャニール」の世界初録音を完成させた。これはサン=サーンスが手がけた最後のオペラで、1911年にモンテカルロ歌劇場で初演された。当時のモナコ大公であったアルベール1世の委嘱により書かれたもので、ストーリーはギリシャ神話の世界を描き、男女の愛憎の烈しさが中核をなす。登場人物は5人に絞られ、各アリアが作曲家の手腕により、とても魅力的な味わいを醸し出している。 山田和樹は参考にできる音源もなく、楽譜を頼りに歌詞も訳し、「完全に《デジャニール》の虜になった」ほどのめり込み、説得力のある蘇演を生み出した。 ◆躍動感に富むピアニズム 中国出身のユンディ・リがショパン国際ピアノ・コンクールで優勝者となって、今年の10月で24年を迎える。これまではショパンをメインに演奏してきたが、新たに立ち上げたのは「モーツァルト:ソナタ・プロジェクト―ザルツブルク」。モーツァルトのピアノ・ソナタをはじめとするピアノ作品集で、ピアノ・ソナタ全曲録音が視野に入っているという。ユンディは子どものころから「僕は音の美しさにこだわっています」と語るように、いかにピアノを豊かに響かせ、人間の声のようにうたわせることができるかを探求してきたが、このモーツァルトも馨しい美音と躍動するリズム、音の陰影が特徴。とりわけゆったりとした楽章の表現と弱音の美しさが際立ち、叙情的で心に響く。 同じく中国出身、アメリカで学んだピアニストのユジャ・ワンは、22年4月にウィーン・コンツェルトハウスで行われたリサイタルのライヴをリリース。アルベニス、スクリャービン、カプースチン、ベートーヴェン、リゲティと幅広いレパートリーを披露し、アンコールにはフィリップ・グラスやグルックなどが含まれ、まさに時代を超えて多種多様なピアノ音楽が楽しめる。 ユジャの演奏は集中力と緊迫感が全編にみなぎり、難度の高い作品でも馨しい音色と深々とした表現力が特徴、ライヴならではの臨場感が伝わる。「私はフルトヴェングラーやクライバーのように生命力あふれる演奏をしたいと思っています」というユジャは、このライヴでも躍動感にあふれたみずみずしい演奏に徹し、ピアノ作品を聴く歓びを与えてくれる。 文=伊熊よし子(音楽ジャーナリスト) (ENGINE2024年8月号)
ENGINE編集部
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