“働きやすい菓子店”が投げかける「街のお菓子屋さん」が抱える大問題、従業員は全員女性「ロミ・ユニ」のすごみ
鎌倉にある「ロミ・ユニ コンフィチュール」は、ジャムと焼き菓子の専門店である。人気のコンフィチュール(ジャム)は、定番のイチゴや洋梨などのほかに、季節商品を含め常時20~30種類並ぶ。パウンドケーキやクッキーなども種類豊富で、地元の人のみならず、全国から多くの人が訪れる。 【写真】まるでジャムの美術館?鎌倉にあるロミ・ユニ コンフィチュールの店内には季節限定品も含め、20~30種類のジャムが並んでいる この店を率いるのが、いがらしろみ代表。知る人ぞ知る、菓子業界のカリスマで、同氏を慕って店を訪れるファンも少なくない。 ■短大卒業パティシェを目指すも…
カリスマが手がける洋菓子店ならば、他にもあるかもしれない。が、「ロミ・ユニ」が画期的なのはスタッフ全員が女性で、執筆時点で21人いる社員のうち半数以上は勤続年数が10年を超えていること。背景には残業がなく、産休・育休がきちんと取れる勤務体系になっていることがある。 「働き方改革」が叫ばれて久しいが、菓子業界、とりわけロミ・ユニのような小規模な菓子店では商品構造上などの理由で長時間労働が当たり前になっており、女性が働き続けることは容易ではない。いがらし代表はいかにして「働きやすい菓子屋」を作り上げたのだろうか。
いがらし代表が働きやすさを重視する背景には、自身のキャリアでぶち当たった「壁」がある。 1971年に生まれた同氏は、お菓子作りが好きで、高校時代に昭和を代表するお菓子研究家の今田美奈子氏のお菓子教室に通い、短大時代はフランス人パティシエによるフランス菓子店の草分け、「ルコント」で販売のアルバイトをし、パティシエになるべく同店に就職する。 【写真】鎌倉・鶴岡八幡宮の表参道に面するロミ・ユニ コンフィチュールの店内には季節限定含めてジャムがずらり。鎌倉限定のジャムやサブレ(クッキー)も
短大出なら企業で事務職として就職し結婚するもの、と思われていた時代に、職人の道を選んだことは周囲を驚かせた。しかし、仕事を持つ母のもとで育った彼女に、腰かけで働く気はなかった。 ところが、いざ厨房に入ると、「人間的な暮らしができない」と感じた長時間労働時間の実態に愕然とする。同時に、「材料屋さんの営業でもお菓子の知識があるし、販売スタッフはお菓子の魅力を伝えられる。お菓子に関わる仕事は、パティシエだけではないと気づいたんです」といがらし代表は振り返る。