アウシュビッツ収容所を直接描くことなく、戦争の、ナチスの残虐さが見える映画 『関心領域』
ニッポン放送「ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町」(日曜朝5時~)で、おススメの最新映画をご紹介しているコーナー『サンデー早起キネマ』。5月19日は、とんでもなく素晴らしい演技が紡ぐ感動作3本をご紹介しました。 その1本は、ホラーではないのに、残虐なシーンは全くないのに、これほど怖い……一生忘れられない映画体験、スタジオA24が送る『関心領域』。
原作は、イギリスの作家マーティン・エイミスの同名小説です。監督・脚本は、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』のジョナサン・グレイザー。10年の歳月をかけて映画化しました。 初お披露目となった第76回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞して以来、各地の映画賞を席巻し、第96回アカデミー賞では国際長編映画賞と音響賞の2冠に輝きました。音響賞……“音”にこれほど衝撃を受け、納得した作品はありませんでした。
『関心領域(The Zone of Interest)』とは、第二次世界大戦中、ナチス親衛隊が使った言葉で、ポーランドにあるアウシュビッツ強制収容所群を囲む40平方キロメートルの地域を指しています。
時は1945年、アウシュビッツ収容所の所長ルドルフ・ヘスとその妻ヘートヴィヒは、5人の子供達と共に、煉瓦塀で囲われた収容所の隣で、それはそれは幸せに暮らしていました。 青い空のもと、緑の芝生にプール、色とりどりの花が咲き乱れる美しい花壇や温室、庭で催されるパーティー……スクリーンに映し出されるのは、とても穏やかな上流階級の家族の日常。誰もが笑顔で、子供たちの楽しげな声が聴こえてきます。 しかし、煉瓦塀の向こう側のアウシュビッツ収容所の存在が、着実に伝わってくるのです。大きな建物からあがる黒い煙、収容所から聞こえてくるあらゆる音、家族が交わす何気ない会話や視線、そして気配から。 壁を隔てたふたつの世界にはどんな違いがあるのでしょうか? 平和に暮らす家族と彼らにはどんな違いがあるのでしょうか? そして、あなたと彼らとの違いは?