最低賃金 福島県内955円、5日引き上げ 経営者、助成金申請が倍増 「利益上がらない中…」苦心
福島県内の最低賃金は5日、時給900円から955円となる。県内の経営者による国の助成金申請件数は前年の2倍を超えており、過去最大の6・1%という引き上げ幅への対応に苦心する経営者の姿が浮かぶ。一方、アルバイトで生計を立てている学生は物価高の中での賃上げを歓迎する。 「利益が上がらない中で賃金を上げるのは容易ではない」。県南地方の男性経営者(67)は悩める胸中を明かす。正社員2人の他、成果報酬を加味した月給制アルバイト17人を雇っている。物価高で既に赤字の月もあり、最低賃金引き上げに対応した上で収支を保つめどは立っていない。増加分の人件費を捻出するには経費削減や商品値上げを検討せざるを得ない状況だ。 会津地方でコンビニを営む男性はパート・アルバイト20人弱の時給を従来の900円から960円に引き上げる予定。これに伴い月給制の従業員10人弱の給料も上げる。月々の人件費は20万円以上増え、利幅が大きく減る。いわゆる「年収の壁」を気にして労働時間を減らすパートが出る恐れもある。「小売業界は人手不足が深刻だ。人のやりくりがさらに難しくなる」と嘆く。会津地方の観光団体の給与事務責任者の男性は最低賃金改定の資料を見つめ「この2、3年の引き上げ幅は大きく、負担は増すばかりだ」と漏らす。
福島労働局に4~8月に事業者から寄せられた業務改善助成金の申請は前年同期の2・4倍の約120件に上った。時給を上げ、人材育成や機械導入など生産性の向上につながる設備投資をした中小・小規模事業者に最大600万円を助成する。担当者は「助成金で負担を抑えて最低賃金を守ってほしい」としている。 働く側は引き上げを喜ぶ。福島市で1人暮らしをする福島大3年の刀川奈南さん(21)は「少しでも給料が上がるのはうれしい」と話す。月5万円の仕送りに加え、飲食店2カ所のバイトを時給900円と千円で掛け持ちしている。まかないで食費を抑えるなどしている。「首都圏に比べて時給は低い。(最低賃金は)千円くらいまで引き上げてほしい」と求める。 民間シンクタンク・とうほう地域総合研究所(福島市)の木村正昭研究員は「企業には賃上げと収益力の強化という難しいかじ取りが求められる」と指摘している。