BREIMENの高木祥太、hamaibaが語る「山一」の歴史
これまでも、これからも 「現実の中の非現実」を求めて
hamaiba BREIMENになってからずっとMVを撮り続けていて、もう20本くらい撮ってるんだけど、そんなことって実はなかなかなくて。同じディレクターが撮り続けることもあるにはあるけど、「20本」って、結構な数だなと思う。やってる体感としても、同じアーティストでMVを20本撮るってムズイことだなと思うわけ。毎回企画がかぶらないように作ってるし、今でも「BREIMENを撮るんだったらこういうことをやりたいな」という思考になるし。それをずっと続けていったらどうなるんだろうということに興味があるから、これからもやっていきたいなと思う。 高木 BREIMENとしては5人で作っていく中で、音像に対して同じ感覚なんだよね。俺らは飽きちゃうから、音像とかいろんな部分で進化していきたくて。しかも俺はメンバーに対しても、上手さとかではなく、その人がどれだけワクワクしているか、進化しているかを求めるタイプで。そもそも映像監督って外注で仕事を受けてバンドや曲ごとにアプローチしていくことが多いから、映像監督がバンドと同じ感覚になっているのはあまりないような気がする。それはいいことでもある。hamaibaは毎回進化してるから楽しいし、「第6のメンバー」感があるね。 hamaiba 今、俺、いろんな仕事してるじゃん? それは、祥太に「つまんないな」と思われたくない、みたいな意識が実はあったからで。だからいろんなところでいろんな人とやろうというふうに思ってたんだよ。 高木 それはなんとなく察してたし、それがあるべき形だなと思ってた。 hamaiba 祥太の周りにいる人は、きっとみんなそう思ってると思う。 高木 俺もそう思ってるしね。 hamaiba 実はちょっと前まで、「(MVを作ること全般に)ちょっと飽きたかも」ってなってて。 高木 去年とか、量がすごかったもんね。何本撮った? hamaiba いや、わかんない。月に3、4本撮ってたから。全部全力でやってるんだけど、ルーティン化してきちゃったりとかさ……あるじゃん? そう思ってたんだけど、実は3日前くらいに新たな目標が決まった。 高木 お、はい。 hamaiba まあ生きてたらさ、色々あるじゃん? 高木 あるね。 hamaiba 急にしんどいことが起きたと思ったら、隣ですんごい明るいことが起きてたり。そうやって色々ある中で、たとえばグランドキャニオンとかピラミッドみたいな世界遺産を見た時って、そんなことが吹っ飛ぶくらい「すげえ!」ってなるじゃん。「なんかわかんないけど、壮大で感動するなあ」とか。あれかも、と思って(笑)。 高木 グランドキャニオンを作るということ? hamaiba 映像でグランドキャニオンとかピラミッドを作ろうと思った。 高木 めちゃいいじゃん。 hamaiba そういう、全部吹き飛んじゃうくらい面白かったり感動したりするものを作る人になりたいなと思った。 高木 俺もちょっと同じようなこと考えた時があった。音楽って、強いメッセージを発信するとか、アジテートするとか、いろんなやり方がある中で、俺は色々やりたいはやりたいんだけど、詞だけ聞くとか字を読むだけではできない、音楽の根源的なところを突き詰めたいというか。現実で起きている嫌なこととかに対していろんな対処法がある中で、逃避とも違う、それを全部超えてくる感動やパワーみたいなものを作りたいし、作れるなと思った。そういうことを考えたことがある。 hamaiba ただ壮大なことをやりたいというわけじゃなくて。本当に陳腐なたとえだけど「砂漠の中に花が咲いてる」とか、そういう小さなものでもいいというか。「現実の中の非現実を作る」じゃないけど、そういう光ってる瞬間を自分の視点によって作ることが「グランドキャニオンを作る」ということでもあるのかな。それを自覚的にやることに、今興味が出てきた。 高木 今話していて思ったけど、「現実の中の非現実」みたいなところも近いよね。hamaibaの他の作品を見ても、全く見たことないものがあるわけじゃなくて、すでに見たことあったり馴染みがあるものが違う使い方をされてたり違うサイズになってたり、そういうふうなものが多いなと思って。今の時代だったらCGを使って無から作ることもできるけど、意外とそれはやらないじゃん。 hamaiba そういう映像も素晴らしいと思ってるけど、見たことないものに対してはあまり共感できない瞬間がある。これは自分がどこに面白いと思うかっていうだけの話だけどね。 高木 やっぱり、そうやってhamaibaとリンクしてることが多いんだよな。だから今後もやっていくんでしょうね。山一はなくなるし、いつ死ぬかもわからないけど、生きてるうちは作品を作っていきましょう。 hamaiba いやあ、でもね……寂しいね。 BREIMEN 常軌を逸した演奏とジャンルにとらわれないスタイルで注目を浴びる5人組オルタナティブファンクバンド。高木祥太がベースボーカルを務める。岡野昭仁×井口理「MELODY(prod.by BREIMEN)」では高木祥太が作詞・作曲、BREIMENメンバーが編曲・演奏に参加。2024年4月、メジャー1stアルバム『AVEANTIN』をリリース。2025年1月より放送スタートするTVアニメ『Dr.STONE』第4期第1クールのエンディングテーマを担当。 hamaiba(GROUPN) 1993年生まれ。愛知県豊橋市出身 /横浜市在住。映像作家。オルタナコレクティブ「GROUPN」を立ち上げ、Music VideoやArt Direction、舞台空間演出、アパレル制作などを中心に多岐に渡る活動を行う。
Yukako Yajima