BREIMENの高木祥太、hamaibaが語る「山一」の歴史
生活から生まれる作品 山一で深めた映像アプローチ
高木 hamaibaのことを話すと――社会からあぶれて地元に帰ったところを俺が引き戻して、家がなかったからここに住んだところからリスタートしたんだよね。 hamaiba そう。20歳くらいから映像の仕事を始めて、祥太がやってた別のバンド(エドガー・サリヴァン)の撮影で、21、2歳くらいの時に出会ったのかな。でもその時はそんなに仲良くなくて。23歳くらいの時、俺が精神と身体を壊して実家に帰ったんだよね。「もう無理だ」「人生終わった」「これからどうしよう」と思って、誰からの連絡も返せない状態の時に祥太から「ビデオ撮ってほしいんだけど」という連絡があって。 高木 いろんな映像監督がいた中でも俺はやっぱりhamaibaの映像がよかったなと思って。「ビデオを撮ろう」ってなった時に、他のメンバーにhamaibaを推したのは俺なのよ。その時は別にそこまで仲良くもなかったけど、絶対にいいなと思って。 hamaiba だから俺の人生のレールを思いっきり変えてくれた。 高木 この回は「俺のおかげで星野源さんのMVを撮るに至った」というところを目指したいから、あえて言わせてもらいましたけど(笑)。 hamaiba (笑)そういう連絡が来て、俺は悩んだわけ。当時は心も粉々で、もう映像なんてできないと思ってたから。でもとりあえず1本撮ってみて、そこから帰ってもいいかもしれないし、みたいな気持ちで行って。その時にこっちに家がなかったから、祥太が「うちに来れば?」って言ってくれて……そこから7年住んでる(笑)。だから本当に、ここからもう一回スタートした。周りの人に不義理をしたところもあったから、当時は「映像でもう一回」というふうに強く思っていたというよりは、とりあえず自分のやれることはこれしかなくて、求められていることを1個1個やろうという感じだったけど。それがここまでただただ繋がっていった感じ。結局自分がダメになっちゃったのって、自分が自分に対してすごく高く見積もっていたからで。「もっと自分はできるはずなのに」という理想が高くて、そこに追いつかないギャップに苦しめられてた。 高木 そのタイミングで予算0円のBREIMENをやってもらったんだよね。hamaibaの特色って、工夫とアイデアに振り切ってたと思う。予算がない中での見せ方が得意だったところから、いろんな案件が増えて、BREIMENも予算が増えていったりしたけど。 hamaiba それもそうなんだけど、祥太とここに住んで作っていたから、「祥太は何を思ってこの曲を書いたんだろう」とか、そういうことをすごく考えたわけ。祥太がここに住んでた時、祥太がデモを作って「こういう曲ができたんだよ」って最速で聴いて、「どういうジャケットがいいんだろう」「どういうビデオがいいんだろう」とか、そういう話をして。だから日々遊んでもいたし、日々打ち合わせみたいだったなと思って。 高木 そもそもそれを打ち合わせとも思ってないしね。曲とかMVに関係ないことも含めてここで話したことが反映されてるから、理解度がめちゃくちゃあったと思う。「実はこういうことがあって」とか裏テーマみたいなことも全部知ってたりするから、ものによってはメンバーより(hamaibaが)理解してる曲もあるくらい。BREIMENのMVは、この家があったからできたことだなとは思うね。 hamaiba 祥太が作る曲は詞と音が繋がっていて、全部にちゃんと意図があるから、「祥太はこういうふうに思ったからここでこういう音なんだ」とか、そういうことまで考えるようになって、その作業がめちゃくちゃ今にいきているなと思う。それが自分にとって武器というか、誰でもできることじゃない領域までいけてるなって。 高木 俺的にはね、hamaibaのMVは机の上で企画会議してない感じなんだよね。生活の中でクリエイティブを作ってたから、必然的にそういう感じじゃなくなるというか。 hamaiba 前提として、MVは「俺の作品だ」というふうに強くは思ってなくて、アーティストのものだと思ってる。まず曲があって、その魅力を増長させるビデオを作ることが仕事だと思っていて。だから話を聞いた上で「こういうものを求めてるんだな」「こういうことがこのアーティストには合う」とかをビジュアル的に考えるというより、人と対峙しながら作ってるというか。あとは祥太といて、詞の読解力が増したと思う。実際合ってるか合ってないかはわからないけど、様々な曲の詞を読解していく中で作り手の感情や真意が少しはわかるようになった気がする。究極、人の気持ちなんてわかんないとは思ってるけどね。 高木 hamaibaのMVの特徴として、友達出しがちだね。 hamaiba 友達めっちゃ出てるよ。 高木 GReeeeNとかPEOPLE 1のMVにも出てるでしょ? hamaiba そうそう。PEOPLE 1のMVにそうちゃん(BREIMENのKanno So。以前、山一に住んでいた)出てるから(笑)。それこそBREIMENのMVじゃなくても、予算がない時にゴン(山一に集う仲間)に車を出してもらったりして。作ってきたMVの思い出の中にみんながいるなあと思う。 高木 まさにこの環境じゃん。メンバーもアイデアを出したり身体を動かしたり、メンバーの友達が動いたり、みんなで作る感じってすごくワクワクがあるというか、バンドのロマンの原型だと思う。BREIMENって、そのままの方法で進んでいるというか。意図してそうなったわけじゃないけど、この家だったからそうなったんだと思うし、そのワクワクをみんなで共有してる感じは BREIMENの特徴でありhamaibaの特徴でもあると思う。 hamaiba その方が面白いんだよね。 高木 そうなんだよね。それを周りも楽しんでくれればいいなと思ってる。音楽業界、クリエイティブ業界って、普通ではない面白さがあるじゃん。それこそMVのセットも「現実にある非現実」だし。それをみんなで楽しむ感じになってる。 hamaiba そうやって作ったものがまた、めちゃくちゃ光ったりするっていうね。