HISは「ラグーナ」を再生できるか
大手旅行会社エイチ・アイ・エス(HIS)が、愛知県蒲郡市の複合型リゾート施設「ラグーナ蒲郡」の主要事業を譲り受けることになりました。経営不振のテーマパークを再生させるのは、同社が2010年に取得し、業績を急回復させた長崎県の「ハウステンボス」に続く挑戦。これまで、同社にはさまざまな案件が持ち込まれているようですが、澤田秀雄会長自ら「最も難しい」と認めるラグーナの再生は果たせるでしょうか。 【写真特集】トラのもん ■トヨタなどの“3セク経営”行き詰まり ラグーナ蒲郡は1991年から開発が始まり、愛知県東部の三河湾に面する約120万平方メートルの埋め立て地にプール付きのテーマパーク「ラグナシア」やショッピングモール、リゾートマンションなどが建設されました。 愛知県、蒲郡市、トヨタ自動車などが出資する第3セクター「蒲郡海洋開発」が運営を担い、ラグナシア開業時の2002年度は428万人(うちラグナシアは114万人)の入場者を集めました。しかし、3年目の2004年度に年間の目標360万人を下回ると、リーマンショック時の2008年度には260万人(同62万人)にまで落ち込み、その後も年間300万人前後で推移しています。 収支も安定しない上、初期投資の負担や未利用地売却の遅れなどが響き、2012年度末の債務超過が78億円に拡大。県やトヨタなどが協議した結果、債務や未利用地の分譲事業は蒲郡海洋開発に残した上で、テーマパークなど主要事業を民間会社に任せる決断をしました。そこで白羽の矢を立てたのが、ハウステンボス再生で実績を積んだHISだったのです。 ■「再生請負人」に白羽の矢 ハウステンボスは152万平方メートルの敷地にヨーロッパ風の街並みを再現した国内最大級のテーマパークとして1992年に開業しましたが、毎年赤字が続き、2003年には経営破綻に追い込まれました。地元の要請を受け、2010年度から事業を引き継いだ澤田会長は徹底したコストカットと同時に、現場を回って社員の士気を高めるなどの社内改革を断行。700万個の電球を使ったイルミネーションや人気アニメ「ワンピース」を起用したクルーズなど斬新なイベントを次々と打ち出し、再建1年目から業績を回復、開業以来初の営業黒字を達成しました。 2013年度の決算でも、入場者数は前年同期比29%増の247万人、営業利益は倍増で過去最高の48.5億円、純利益も27%増の53億円と発表するなど好調ぶりを維持しています。こうした「再生請負人」の経営手腕に期待して、HISには海外を含めてさまざまな案件が持ち込まれているそうです。その中であえてラグーナを選んだ理由は何なのでしょうか。