<相次ぐ電気料金の値上げ>なぜ、毎月上がるのか?専門家が料金設定や補助金の制度を徹底解説
再エネ賦課金が上がった
再エネ設備から発電された電気の買取費用は、電気料金から負担されます。買取に必要な額から、再エネの発電により節約できた費用を差し引き電気料金の再エネ賦課金として請求されます。 節約できる費用は回避可能費用と呼ばれます。火力発電の燃料費ですが、今は卸市場の価格で計算されています。昨年度、燃料費は大きく上昇し、回避可能費用も大きくなりました。その結果、再エネ賦課金も下がりました。 今年度は、大きな額の回避可能費用は見込まれておらず、再エネ賦課金額も上昇しました(図-4)。 23年度は1kWh当たり1.40円でしたが、24年度は3.49円になります。月間の電力消費量が260kWhの標準家庭の負担額は、907円。年間1万900円です。 昨年12月末の時点で、12年のFIT開始以来再エネからの電気の買取に使用された資金は累計約28兆円になりました。
もっとも資金が使われたのは業務用(10kW以上)の太陽光発電設備からの電気です。18兆3800億円が、累積4935億kWhの発電量の買取に使用されました。 平均1kWh当たり37円という金額が支払われていますが、FIT導入初期に設定されていた高い買取価格での導入量が多いためです。 22年度の太陽光設備の発電量は、926億kWh。総発電量に占める比率は9.2%です(図-5)。費用に見合う効果があったでしょうか。 買取価格については、大規模な設備では入札制度が導入されるなど、引き下げが工夫されていますが、業務用太陽光から発電される電気の買取期間は20年間あります。消費者の負担が減少することは、当面ありません。
これから電気料金はどうなる
電気・ガス料金を対象にした激変緩和措置も終わります。燃料価格は落ち着いていますが、エネルギー危機前との比較では依然高くなっています(図-6)。 発熱量当たりの単価では最も競争力がある石炭に対する風当たりが強くなり、4月の主要7カ国(G7)のエネルギー・環境相会合ではCO2排出削減対策が取られていない石炭火力発電所の30年代前半での廃止が合意されました。 日本の石炭火力発電の利用年数は欧米諸国よりも短いので(脱石炭に向けた途上国の本音、アメリカの本音 )、すぐに廃止されることはないでしょうが、価格競争力のある石炭火力が減少し、再エネ設備で置き換わることになれば、電気料金は上昇します。 脱炭素に向かう中で競争力のある電気料金を確保する手段として原子力発電の活用は待ったなしのように思えます。
山本隆三