元バス運行管理者「週2回の泊まり勤務に長時間残業、苦情電話…先輩が次々と休職する中でも仕事を続けられたワケ」
バスの運転士不足が叫ばれる中、路線バスを減便する動きが全国各地でみられています。日本バス協会によれば、12万1000人の運転手が必要なのに対し、現状11万1000人とすでに1万人不足しており、その不足は今後さらに拡大していくそうです。一方、バスの運行管理者の経験を活かし、交通系YouTuberとして活動しているのが綿貫渉さんです。その綿貫さん、「バスの運行管理者の仕事はあまりにも大変すぎて、車庫の地面に転がって叫んだこともあった」そうで――。 【表】運行管理者が7名いた場合のシフト。しかしひとり休んでしまうと… * * * * * * * ◆先輩が次々と休職。次は自分の番 バスの運行管理者は大型二種免許を持っていないのにベテランの運転士に指導しなくてはいけない。 苦情の電話も毎日のようにかかってくる。 明日の運転士の勤務もギリギリまで決まらないことがある。 残業は長時間。 こんな環境でやっていけるのだろうか。答えはもちろんノーだ。 私の営業所では運行管理者の定員は7名ということになっていた。7名いると、1週間に泊まり勤務を2回、日勤を1回、休みを2日とすることで、綺麗に1週間サイクルで勤務が回る。 これが1名休職して6名体制になると、2週間に泊まり勤務を5回こなすことにより、何とか週休2日で勤務が回る。 さらに減って5名になってしまうと、もはや勤務は回らないため、運行管理者の休日出勤や、一時的に本社からの応援を依頼してしのぐという形になる。 5名まで減ってしまうようであれば、臨時の人事異動ですぐに6名体制になるが、6名だと当面はそのまま6名体制だ。
◆地面に転がりたくなる辛さ 私が運行管理者になる前、1年間事務担当をしていたが、その1年間の間に次々と先輩が休職していった。私が配属になった当初は定数の7名体制だったが、すぐに1名が心身の不調により休職。 6名体制となるが、数ヶ月後に異動により7名体制に戻る。そのタイミングを計ったように、もう1名が心身の不調により休職。最初に休職していた人が復帰して7名体制に戻るが、また1名が休職……といった具合だ。 ギリギリのところで頑張っているものの、6名体制のときに休職してしまうと勤務が回らなくなってしまい、周囲に迷惑がかかり休めない。 7名体制になったところで緊張の糸が切れて、職場に行こうと思っても家から動けなくなってしまう。気持ちはよくわかる。 私が運行管理の仕事を始めた初日のこと。 最終バスの運転士が帰ったあと、あまりにも仕事が大変すぎて、バスが100台停まっているだけで誰もいない車庫の地面に転がって叫んだことを覚えている。今考えると正気の沙汰ではない。 また、私が運行管理の仕事をやるよう任命されたのも、7名体制で回っていた運行管理者が1人休職して6名になったタイミングだった。休職者がいなければ、もう少し運行管理の仕事を始めるタイミングは遅かったかもしれない。 今は改善されていると聞くが、当時はそんな状況だった。
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