川重と海自、潜水艦修理で40年続く馴れ合い、契約内と誤認する隊員も…防衛省報告書
防衛省が27日公表した特別防衛監察の中間報告で、海上自衛隊の潜水艦修理契約を巡り、川崎重工業が乗組員に不正に物品を提供する慣習が約40年前から存在したことを明らかにした。物品提供を受けた乗組員の半数以上が「問題ない」と誤った認識を持っていたことも判明。家電や私物に至るまで乗組員の要望に応える「なれ合い」の構図が浮き彫りになった。 海自の潜水艦は練習艦などを含め全25隻。過酷な環境で隠密行動を取り続けるため定期的な点検が欠かせない。3年に1回、10カ月程度の定期検査と毎年2~3カ月程度の年次検査を行う。25隻の半数が川重製で同社の神戸造船工場に入る。 ■工具に冷蔵庫、ゲーム機まで 検査は、川重の「工事担当者」(工担)と、乗組員を分野ごとにまとめる「パート長」が連携して実施。海自の「監督官」が個々の工程を管理する。 検査期間中、パート長らから工担へ要望物品が示されていた。工担は渡されたリストや丸印を付けた物販カタログのコピーなどを基に下請け会社に調達を依頼。裏金で物品を購入したほか、一部は工担の飲食費になり、乗組員との懇親会で多めに負担することもあったという。 今回、25隻の潜水艦内と陸上基地の倉庫、宿舎などを調べた結果、企業の提供物品が73点、出所不明品が658点が見つかった。計731点の6割が艦内にあった。 報告では、出所不明品とあわせて、艦内業務に使うモニターやケーブル類など▽整備作業に使う工具類、安全靴、作業着など▽艦内生活で使う冷蔵庫、コーヒーメーカーなど-が多数。一部でゲーム機などの娯楽品もあった。 ■6割が「問題なし」と誤認 川重は裏金の原資を捻出するため、あらかじめ下請けの資材業者に、修理中に艦内を保護する難燃性のゴムシートなどの養生材を架空発注。過去6年間に業者3社で計約17億円をプールしていた。ただ裏金の使途には工担や川重作業員らの要望品も含まれ、どの程度が乗組員側へ渡ったかを確認することは困難だとする。 なぜ不正はまかり通ったのか。乗組員経験者約2500人弱への無記名調査で約8%が物品提供を「受けた」とし、このうち約65%が「契約範囲内で問題ない」との誤った認識を示した。慣例化する中で問題ないと誤認した乗組員が要望を繰り返し、関係を悪化させたくない工担が応じる形ができたとみられる。