電機大手4~6月決算 円安後押し、三菱は売り上げ過去最高 ソニーG社長「今後の動向を注視」
総合電機各社の2025年3月期第1四半期(4~6月)決算は、海外などの不安定な市場動向から一部で苦戦した事業があったものの、デジタルやサービスなど注力事業として取り組む領域は、おおむね順調に推移した。円安の後押しを受けたところも多かった。ソニーグループは増収増益となり、三菱電機は売り上げが過去最高を更新。情報通信関連は各社とも大きく伸ばした。足元の株式市場は不安定な動きもあるが、各社は市場環境を慎重に見極める考えで、通期見通しは大半が据え置いた。 【関連写真】電機大手各社の想定為替レート 好決算だったソニーグループは、ゲーム、音楽、イメージセンサーなどの分野が大幅に増えた。各事業領域を為替の好影響が後押しした。テレビやデジタルカメラなどのAV関連機器が日米欧で想定通りの進捗(しんちょく)だったほか、イメージセンサーもスマートフォン向けの回復などがあり順調なスタートを切った。 日立製作所は、日立アステモの再編などで前年同期比減収だが、デジタルや脱炭素などを中心に拡大。注力事業に掲げるデジタル、エネルギー・鉄道、社会インフラの3事業領域は好調で、収益が2桁伸長となった。注力しているデジタル事業「ルマーダ」が順調に伸び、加藤知巳執行役専務CFO(最高財務責任者)は「ルマーダが全体をけん引している」と話した。 三菱電機は社会システムや電力、防衛・宇宙などのインフラ分野が拡大するとともに円安にも後押しされ、過去最高売り上げを更新。一方、FAシステムがリチウムイオンバッテリーなどの脱炭素関連分野で停滞し営業利益は苦戦を強いられた。 堅調だったインフラは社会システム、電力とも受注、売り上げ、利益が伸長。空調・家電は欧州で家庭用空調が低迷したものの、国内と中国を除くアジアが堅調だった。 パナソニックホールディングス(HD)は、情報通信関連やアビオニクスをはじめ、生成AI(人工知能)関連の販売が好調で増収だったが、家電や車載電池などが減益になり利益項目は苦戦。産業向けは生成AIの拡大が追い風になったが、家電は中国市場の減速や欧州の空調機器の低迷の影響を受けた。梅田博和副社長グループCFOは「中国は想定より厳しい結果になった」と総括した。 富士通とNECはデジタルトランスフォーメーション(DX)関連の案件が拡大。富士通はDXを中心にサービス関連を拡大したほか、NECは国内外でIT(情報技術)サービスを伸ばした。 富士通は、成長事業として事業ブランド「Fujitsu Uvance(富士通ユーバンス)」を掲げ、デジタルやグリーンを切り口に事業を推進。ユーバンス関連は2桁伸長するなど好調だ。4~6月の業績について磯部武司副社長CFOは「計画を若干上回っている」とした。 前年度から厳しい事業環境に立たされているシャープは、ディスプレーなどのデバイスは減収だが損失は前年並みにとどめた。半面、AVや白物などの家電やオフィス向けは堅調に推移。売り上げは微減、営業損益は改善した。成長領域は売り上げ、利益とも2桁伸長している。 経営再建中の東芝は「東芝再興計画」発表後、初めての決算となった。売り上げ、利益とも改善し、全ての利益項目が黒字化。4~6月の黒字は2年ぶりだ。送変電・配電、公共インフラが好調に推移したほか、鉄道、産業やビル向けも改善。池谷光司副社長は「順調なスタートとなった」と述べた。 不安定な市場環境を懸念する声も 通期連結業績見通しはソニーグループと三菱電機が上方修正。ソニーグループは円安の影響を織り込み、売り上げ、営業利益、最終利益を上方修正、営業利益は過去最高を更新する見通しだ。ただ不安定な市場環境を懸念しており、十時裕樹社長COO(最高執行責任者)兼CFOは「今後の動向を注視する」との考えを示した。 三菱電機も売り上げを上方修正。懸案のFA関連の回復見通しは後ろ倒しにしたが、増田邦昭常務執行役CFOは「回復する見通しは立っており、下振れリスクは最小」としている。 今年度が中期経営計画の最終年度となる日立製作所はおおむね計画を達成できる見通し。苦戦したパナソニックHDは通期見通しを据え置いた。梅田CFOは「第2四半期(7~9月)の状況をみていく」との考えを明らかにした。 シャープは黒字化の計画を据え置いた。沖津雅浩社長兼CEOは「計画通りに進捗している」とし、この先の事業環境をみながら柔軟な対応を図っていく。NECは「DX事業を強化する」(藤川修代表執行役CFO)計画で、収益拡大を目指す。
電波新聞社 報道本部