デビュー40周年の長山洋子が振り返る「ASKA」「中原めいこ」「中島みゆき」ら豪華作家陣との思い出 「みゆきさんは私のことをまとめたノートを作ってくださって……」
新作「白神山地」では三味線に苦労、共演中の細川たかしは「まさに、あのまんま(笑)」
ここからは、Spotifyランキング演歌部門では現在14位まで上昇している、最新シングル「白神山地」について語ってもらおう。 「今年はデビュー40周年なので、三味線の立ち弾きの曲となりました。ディレクターが実際に白神山地に行ってテーマを考えてくれて、津軽ものには珍しいメジャー調でやってみようという発想が浮かんだようです。 立ち弾きは、シングルでは『じょっぱり よされ』以来6年ぶりなんですが、三味線のお稽古では、歌と手さばきを同時に覚える必要があって、別々にはできないんですよ。しかも、『白神山地』はメジャー調なので、普段ほとんど使わないコードを押さえる必要があり、体に入ってくるまで、何十回と練習しました。コンサートの旅先にまで家元に来ていただいて、空き時間に、近くのカラオケボックスで。いつもなら3、4回で身につくのに、本当に大変でしたよ(笑)」 それだけに、これまでの作品の中でもかなり明るく弾けた歌と演奏をしていることがテレビの画面からも伝わってくるし、長山がラストで掛ける「はっ!」という声も実に快活だ。 「『白神山地』は軽快なリズムなので歌っていても心地いいんです。しかも、明るいエールソングなんですが、歌っていくうちに、一人の女性の人生が描かれている気がしてきたんです。さまざまな出会いがあり、試練を乗り越えた先に今があるということや、プライベートでの葛藤など、私にも思い当たることが多くあり……。そういったことが楽曲に詰まっているので、みなさんにも共感してもらえると思います」 この十数年間は、結婚、出産や育児、そして乳がんの手術など実生活でも大きな変化のあった長山だが、歌詞中の「命たぎらせ生きてきた」「私負けないくじけない」「自分に打ち勝つ 強さを知った」といった圧倒的に前向きな言葉は、確かに彼女の人生を鑑みて書かれた可能性もある。ちなみに、カップリング曲の「春色の朝」はなんとシャンソン風で、“近年はカップリングで挑戦するというパターン”が続いているそうだ。変わった曲調への人気にいつ火が付くのかわからないのがサブスクなので、こうした試みも興味深い。 また現在、細川たかしと「ふたりのビッグショー」と称して、年間100公演を超えるコンサートを実施中。細川は「望郷じょんから」、長山は「じょんから女節」と、共に津軽をテーマとした代表曲を持つ。 「細川さんは裏表がなく、まさにみなさんご存じの、あのまんまのイメージですよ(笑)。普段は冗談ばかりですが、歌に対する向き合い方がとても真面目で、ずっと変わらないんです。民謡ご出身で、発声の仕方も徹底なさっている姿勢など、学ぶところが多いです」 最後に、サブスクのリスナーで彼女の作品を聴き始めた方へのメッセージをお願いすると、 「40年やっていると私自身も、タイトルは出てくるけれど、歌詞やメロディーを忘れかけているものもありますが(笑)、隠れた名曲がこんなに気軽に聴けるのはとてもいいですよね。その中で、みなさん好みが異なるでしょうから、自分の中で意外な“長山洋子”を発見してもらえたら嬉しいです!」 自身が司会を務めるテレビ番組「洋子の演歌一直線」(テレビ東京系)も今年で31年目を迎え、今でも“最近は、こういう歌が多いんだ”と収録を楽しんでいるという長山。アーティスト路線を何度か変えた際のことを振り返っても、“たとえ、すべてに対して納得していないとしても、まずは頑張ってみる”といったスタンスが一貫していることがわかる。周囲のスタッフを信頼しつつ、自分は与えられた役目を楽しむということが、長年の活動を続ける秘訣のようにも思えてくる。他の演歌歌手にも元アイドルにもない稀有なキャリアを活かした、長山洋子ならではの更なる音楽活動を大いに期待したい。 *** 【前編】ではアイドルから演歌歌手への転身の葛藤について語っている。