世界の景気拡大の勢いは鈍っている? 企業景況感からわかること
世界経済の拡大モメンタムは1月以降、鈍化している可能性が高いと判断せざるを得ません。速報性に優れたグローバル製造業PMIは2月に54.2へと0.2ポイント低下して2カ月連続で水準を切り下げました。この指標は世界の企業に景況感を調査したもので、一般的に50を上回っていると生産活動が活発化している目安となります。
調査項目を細かくみてみると楽観的な状況ではない?
したがって、目下の水準は依然として実体経済の力強さを示す領域にありますが、調査項目を細かくみると、ヘッドラインの数値が示めすほど楽観的ではないことが浮き彫りとなります。PMIの調査項目では、新規受注が低下するなかで最終財在庫が積み上がり、受注残が減少していることが示唆されました。製造業生産の先行指標となる新規受注・在庫バランスは明確に下方屈折し、在庫循環の観点から生産調整局面が近づきつつあることを示唆しています。こうした新規受注・在庫バランスの反転低下は、日本の製造業PMIで確認されているほか、ITサイクルの影響を受けやすく景気敏感な韓国と台湾でも同様の動きとなっており、世界的に景気拡大のモメンタムが弱まりつつあることを示唆しています。
2月以降、世界的に株価が不安定化したのはマクロファンダメンタルズに概ね整合的な動きであったと言えます。製造業PMIは“前月との比較”を企業に問う形式を採用しているため、それが無限に改善することはあり得えません。また調査が実施されている33カ国のうち32カ国が節目の50を上回るという稀にみる楽観的な環境でした。こうした状況は、景気拡大の“余地”という点において市場参加者の期待が減衰していたことを意味します。このように景気拡大の期待が限られている以上、当面の金融市場は神経質な展開が続くと予想されます。
(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。