日銀短観9月調査、大企業製造業DIが10年ぶりの最高水準 景気回復は本物?
次に営業・生産用設備判断DIに目を向けると、こちらも過剰感が解消し、直近4四半期は不足超の状態にあります。この指標はマイナス幅が拡大するほど工場設備が不足していることを意味します。これまで新規投資を絞ってきた中小企業を中心に設備の不足感が強まっていることが示されました。工場設備の稼働率は、実質的にフル操業に近い状態にあるとみられ、人手不足を補うための省力化、効率化投資が期待されます。 需要と供給能力の差である需給ギャップを近似するこれらの指標の動きに鑑みると、経済の弛み(未稼働のヒトやモノ)が縮小していることに疑いの余地はありません。物価と賃金は、日銀を満足させるほどには至らないものの、先行きは上昇加速が見込まれます。
最後に企業収益に目を向けると、TOPIXの予想一株あたり利益(EPS)と密接に連動する大企業・全産業の売上高経常利益率が一段と上向きました。2017年度計画では6.37%という数値が示され、これは調査開始以来で最も高い水準です。ここで注目すべきはこの2年程度、為替の円安が一服しているにも拘らず、製造業のマージンが上昇していることです。これは輸出企業の国際競争力の回復を象徴しているでしょう。為替の円安が進まなくても、日本企業の収益力が改善したことは、日本経済の「為替離れ」を物語ると同時に、2017年入り後の金融市場で観察されている「株高・円高」の一部を説明していると思われます。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。