トヨタFJクルーザーは懐かしいけど古さを感じさせなかった【10年ひと昔の新車】
完全な復刻版ではなく、レトロだけど古さを感じさせない新しいもの
2010年12月、北米市場で2006年から販売されていたトヨタFJクルーザーが日本国内でも販売されることになった。どこか懐かしさを感じさせるフロントフェイス、40ランドクルーザーを彷彿させるホワイトルーフ、塊り感のあるデザインが人気を呼び、ついに日本導入が決まったのだった。Motor Magazine誌では、早くからこのモデルに注目、今回は登場後、間のなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年2月号より) 【写真はこちら】特徴的な観音開きドア。リアドアは90°の開口が可能。(全6枚)
ひとつひとつの操作が楽しいと感じるクルマに、そう出会えるものではない。そして、そう感じるのは、クルマに惹かれる部分があるからにほかならない。興味がなければ、感心こそすれ、心は動かないからだ。 FJクルーザーには、心が動き、そして驚かされた。まずはワイパー。なんとアームが3本もある。雨が降っていなくてもどんな動きをするのか、誰もが絶対に試したくなるだろう。 室内に用意されている装備もどれもがとても興味深いものばかりだ。気持ちいいほど直線的なラインを多用したセンタークラスターはどこか懐かしさを感じるデザインだ。シフトレバーも、まるで昔流行った水中花入りのマニュアル式のシフトレバーみたいな長さだ。でもそのどれもにワクワクしているのも事実だ。視線を上に移せば、直立したフロントガラスから見えるいつもの景色も不思議と新鮮に見える。 観音開きドアだってそうだ。助手席が空いていても、わざわざ後席に乗り込みたくなる。リアの居住性が広いとか狭いとかというよりそこからの景色はどのように見えるのか、ドアはどのように開くのだろうかとドキドキするのだ。さらに、高いところから眺めたくなるホワイトルーフは、FJ40ランドクルーザーを彷彿させる。丸目ヘッドライトもレトロな雰囲気を持たせているが、実はFJクルーザーは、まったく違うコンセプトで開発されていた。 チーフエンジニアの西村氏は、FJクルーザーを「まったく新しいジャンルのクルマ」だと言う。そして「このクルマを見て、誰もがFJ40、BJ40を思い浮かべるでしょう。でも、完全な復刻版にするとそれで終わってしまうので、見た目も性能もどう表現するか悩み抜いてたどり着いたのが、レトロだけど古さを感じさせない新しいものというコンセプトだった」と続けた。 開発者が狙った新鮮さはボディカラーにまず現れている。FJクルーザーに用意されるのは、ツートンイエロー/ツートンブリックレッドメタリック/ホワイト/ツートンブルー/ツートングレーメタリック/ツートンブラック/ツートンベージュの7色だが、そのどれもがFJクルーザーにしか使われていないという。つまり、あのインパクトあるイエローもブルーもFJクルーザー以外に使われていない。そこには色にもプレミアム性を持たせたいとの狙いがある。