魯迅の恩師、藤野厳九郎にじむ人柄 坂井市の県教育博物館で特集展示
中国の文豪魯迅(ろじん)の日本留学時の恩師で、現福井県あわら市出身の医師藤野厳九郎の生誕150年を記念した特集展示が、坂井市の県教育博物館で開かれている。厳九郎の父で医師の升八郎や、おいの細菌学者恒三郎を含め、県内初公開の資料などを通し、藤野家の人柄に迫っている。9月29日まで。 厳九郎は1874(明治7)年、現在のあわら市下番に生まれた。仙台医学専門学校(東北大医学部の前身)の教授時代に、留学生の魯迅(周樹人)を熱心に指導し、「生涯の師」と仰がれたことで知られる。 展示資料は計26点。中国の国家一級文物(国宝)に指定されている魯迅の「脈管学ノート」の複製も並ぶ。厳九郎の朱筆の添削から、小説「藤野先生」でつづられたエピソードがうかがえる。県内初公開の「藤野家集合写真」は、40代の厳九郎が帰郷した際に撮影されたとみられ、恒三郎も一緒に写真に納まっている。 日本で「魯迅選集」が発刊される際に「藤野先生ダケハ入レタイ」などと記した「魯迅書簡」(画像)も紹介。食中毒の原因菌「腸炎ビブリオ」を発見した恒三郎が、一般向けに「腸炎ビブリオの性格、恐ろしさを知らせて繁殖をとめる方法を徹底的に普及したい」としたためた「腸炎ビブリオ読本」は、学者としての使命感が伝わってくる。 展示の担当者は「厳九郎は気難しい面がありながら、貧しい患者には治療費を催促しなかったなどとされる。升八郎や恒三郎の資料とともに3人の患者本位の人柄を知ってもらえたら」と話している。入場無料。月曜、祝日の翌日休館。