噂の中国EVセダンを公道試乗! BYD シールのお値打ち度
――ブレードバッテリーは発火の危険も少なく寿命も長いといわれていますが、この技術を実現できた背景には何があるんですか? 山本 約7万人の研究員を抱えているのが大きいでしょうね。さらに言うと、創業者の王伝福BYD会長兼CEOは大学時代から電池の研究を行なってきた〝電池大王〟で、今も暇さえあれば自ら研究を行なっているそうですよ。 ――シールは究極のEV? 山本 いいえ。確かに基本素性の部分は日本車顔負けの実力を持っているのは間違いありません。ただし、クルマはそれだけではダメなことは皆さんもおわかりですよね。 ――どういうこと? 山本 BYDは技術屋集団的な企業なので、「最高の技術を盛り込めば、最高のクルマに仕上がるはず」との考えが強いようで、数値に表れにくい感性領域へのこだわりはあまり感じられません。 ――もう少し言うと? 山本 老舗自動車メーカーが大事にしている、そのブランドならではの〝味〟や〝魂〟がシールからは感じられないんです。もちろん、前述のとおり素性の悪いクルマではありませんが、どこか無機質で......たとえるなら必要な栄養素はたっぷり入っているんだけど、うまみを感じない健康食のような感じですかね。 ――あー。 山本 厳しい言い方をすると、コスパだけでは通用しないのが、クルマの世界です。ただし、この数値に表れにくいところをBYDが本気で追求するようになると、本当に怖い存在になりうる。 ――BYDのメイン市場は中国ですが、ユーザーがクルマを選択する決め手は? 山本 今は性能、機能、装備の充実が優先のようです。しかし、数値や性能というのは、新型に追い抜かれるものですが、味や魂はそうではない。BYDが世界市場への進撃を開始するなら、僕はこの感性領域に本気で取り組む必要があると考えています。 ――仮に感性領域の課題がクリアできたとしたら? 山本 シールのボディ構造やクルマの根幹部分は、〝欧州メーカーのレシピ〟が再現されている部分が多い。つまり、素材はいいので、大化けする資質は十分あります。あとはBYDがどのように調理していくかでしょうね。 撮影/山本佳吾