年金の財政検証、改善傾向所得代替率50%維持 高齢者や女性の労働参加で保険収入増が要因
厚生労働省は3日、公的年金の長期見通しを示す財政検証結果を公表した。現役世代の平均手取り収入と比べた年金受給額の水準(所得代替率)は、経済成長が標準的なケースで2057年に50・4%となった。現在より約2割低下するが、政府が約束する「50%以上」を維持するとして制度の持続性を確認した。 【表で見る】給付水準調整の終了年度と所得代替率の見通し ■代替率は改善傾向 今回試算した4パターンのうち、経済成長が進むと想定した他の2パターンは代替率が56・9~57・6%になると見込んだ。5年前の前回検証結果とは経済前提が違うため単純比較できないが、全体的に代替率は改善傾向になった。高齢者や女性の労働参加が進み、保険料収入が増えることなどが要因だ。 また、厚労省は国民年金保険料の納付期間を現在の「60歳になるまでの40年」から「65歳までの45年」へ延長する案も検討したが、優先度が低いとして見送る。厚労省は今秋以降、制度改革の検討を本格化させ、来年の通常国会に関連法改正案を提出する方針だ。 ■モデル世帯の受給水準は22万6千円 財政検証は5年に1回行われており、今回が4回目。「40年間厚生年金に加入した平均的な収入の会社員の夫と専業主婦の妻」をモデル世帯と定義して、夫婦合計での受給水準を示している。モデル世帯の24年度の夫婦の基礎年金と夫の厚生年金の合計は22万6千円。現役世代の平均手取り収入額は37万円で、代替率は61・2%だった。 厚労省は今回、専門家らの意見を踏まえ、実質経済成長率を①1・6%と仮定した「高成長実現」②1・1%の「成長型経済移行・継続」③マイナス0・1%の「過去30年投影」④マイナス0・7%の「1人あたりゼロ成長」-の4パターンで試算した。 ②のケースでは、今後100年間で給付と負担を均衡させるためマクロ経済スライドを発動するのが37年度まで。このとき現役世代の収入は41万6千円で、モデル世帯の年金額は24万円、代替率は57・6%。①の場合は発動が39年度までで、代替率が56・9%だった。 ③のケースでは代替率は57年度に50・4%まで低下するものの50%は維持。逆に④の場合は、59年度に国民年金の積立金が枯渇し、その後、保険料と国庫負担で賄うことができる代替率は37~33%程度にとどまる。