NTNは4期ぶり当期赤字…軸受3社の通期見通し、自動車生産停止直撃で〝急ブレーキ〟
軸受メーカー3社の事業環境が悪化している。主要供給先である自動車の生産が振るわず、3社はそろって2025年3月期連結業績予想を下方修正した。NTNは当期損益が4期ぶりの赤字となる見通し。コロナ禍後の需要回復や為替の円安で業績改善が続いてきたが、欧州・中国経済の停滞などで一転、ブレーキがかかっている。 「10月からは販売減少の影響が強くなりそうだ」。NTNの鵜飼英一社長は24年度の前半に続き、後半も厳しい事業環境を予想する。コロナ禍後に緩やかに回復してきた自動車販売は、メーカーの認証不正による信頼低下や生産停止でつまずいた。中国の電気自動車(EV)メーカーが急成長した結果、顧客の日系自動車メーカーは中国事業を縮小。EV自体も販売が世界的に伸び悩む。NTNは電動車向けに注力する先行技術の商談で、先送りやキャンセルも生じている。 24年度後半から需要が先行回復するとみていた工作機械向け軸受も思わしくない。25年3月期は事業の構造改革費用を70億円前倒しで積むため、大幅な当期損失を見込む。 日本精工は25年3月期連結業績予想で、売上高と全利益段階を下方修正した。市況の回復遅れや自動車生産台数の下振れなどを受け、産業機械や自動車向けの軸受が振るわない。鈴木啓太最高財務責任者(CFO)は「26年度に向かって収益を伴う成長をどう描くかが課題だ」と捉える。 欧州をはじめ赤字の地域・事業の構造改革や生産再編を推進する。「欧州の自動車産業の動向を注視しながら対応する。収益力確保に向けて、ポートフォリオを変革し、収益の高い分野に参入する」(鈴木CFO)方針だ。 ジェイテクトも25年3月期連結業績予想で、全体の売上高と全利益段階を下方修正した。産機・軸受事業でも減収減益を見込む。神谷和幸CFOは同事業について「鉄鋼、半導体といった産機向けはもう少し回復すると予測していたが、非常に厳しい状況が続く」と説明する。 NTNの鵜飼社長は「自動車では3年先の商売を今、顧客と詰めている。動力効率の高い等速ジョイント(CVJ)は、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)向けに少しずつ増えてきた」と、付加価値向上に努める。だが軸受は車の販売数量に左右されやすく、コロナ禍後の回復から後退に転じるおそれがある。EVも自動車メーカーの主役交代や成長鈍化が生じ、見通しづらい。軸受3社はどこに活路を求めるのか、難しい局面を迎える。