「またこんなに引かれてる…」給与明細を見てションボリ。手取りを増やすために知っておきたい「所得税」と「控除」の基礎知識【税理士が解説】
給与明細を見るたび、引かれる金額の大きさにションボリしてしまう…。そんな人も多いと思います。しかし、節税すればもっと手取りを増やせるかもしれません。ここでは、ベテラン税理士が「所得」の概念と、所得を圧縮できる基本的な控除等について説明します。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
「給料の手取り、どうしてこんなに減ってしまうの?」
30代の独身会社員です。勤務先は中小企業で、毎月の給料も決して高くありません。しかし、そこからさらに「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」「所得税」「住民税」…と、ごっそり引かれており、振り込まれた金額をを見るたび、ションボリしてしまいます。しかし、所得から「控除」して税額を抑えることができるものもあると聞きました。わかりやすく教えてください。 30代会社員(東京都荒川区)
所得税=個人が1年間で得た所得に対して課される税金
「所得」とは、「収入」から「必要経費」を差し引いた残額であり、「所得税」とは、個人が1年間で得た所得に対して課される税金です。計算された所得に税率を掛けることで、所得税が求められます。 「収入」 給料や報酬などの入金される金額で、サラリーマンの場合は給料やボーナスが、個人事業主の場合は売上が収入となります。 「必要経費」 売上原価や販売費などです。生活費などは含まれません。収入よりも必要経費のほうが大きい場合、所得がマイナスになることもあります。 所得税の計算では、所得を10種類に分類して計算します。所得の種類には、(1)利子所得、(2)配当所得、(3)不動産所得、(4)事業所得、(5)給与所得、(6)退職所得、(7)山林所得、(8)譲渡所得、(9)一時所得、(10)雑所得があります。 最終的な所得税額は、課税所得金額に累進課税率を適用して計算されます。累進課税は、所得が増えるほど税率が高くなる仕組みです。一方、分離課税の所得には異なる税率が適用されます。 計算された税額からは、源泉徴収税額や予定納税額を差し引き、その残額を確定申告時に納付します。 【不動産所得】不動産の貸付けから得られる所得のこと 「不動産所得」は、不動産の貸付けから得られる所得で、年間の収入から必要経費を控除して算出されます。収入には家賃や駐車場料金などが含まれ、敷金や保証金は含まれません。経費には固定資産税や管理費、修繕費などが含まれます。青色事業専従者給与では、実際に支払った給与を経費として全額控除できますが、適切な届出が必要です。 事業的規模の賃貸経営、例えばアパートが10室以上など、特定の基準を満たす場合には、青色申告特別控除が適用され、最大65万円の所得控除が受けられます。 【事業所得】総収入から必要経費を差し引いて算出する 「事業所得」は、総収入から必要経費を差し引いて算出されます。必要経費には売上原価、販売費、一般管理費などがあり、これらは事業運営に直接関連する費用です。個人の生活費や税金は経費に算入できませんが、業務と関連する家賃や光熱費は一定の条件下で経費に含めることができます。 事業所得には、青色申告特別控除が適用される場合があり、複式簿記を用いた適切な申告を行えば、最大65万円の所得控除が受けられます。 売上原価の計算は期初の在庫と当期の仕入れから期末在庫を差し引いて行います。減価償却は、固定資産の価値減少を経年にわたり分配する方法で、事業の必要経費として計上します。 【給与所得】給料、ボーナスのこと。住宅手当、家族手当も含む 「給与所得」は、給料やボーナスなどです。住宅手当や家族手当なども含まれます。給与所得は、収入から給与所得控除を差し引いて算出されます。 給与所得者は、年末調整を通じて、1年間の給与収入に対する税額と毎月の源泉徴収税額の差が精算されます。 【退職所得】退職手当や一時金など、退職に際して受け取る所得 「退職所得」は、退職手当や一時金など、退職に際して受け取る所得です。分離課税となり、会社が行う源泉徴収で税務が完了します。退職所得控除は勤続年数に応じて計算されます。 【譲渡所得】土地や株など、資産を譲渡したことで得られる所得 「譲渡所得」は、資産を譲渡したことによって得られる所得です。譲渡所得は、「土地建物等の譲渡所得」「株式等の譲渡所得」および「その他の資産の譲渡所得」に分けられます。 土地や建物の譲渡所得は所有期間に応じて短期または長期に分類され、異なる税率が適用されます。一方、株式の譲渡所得には所有期間による区別はなく、一律の税率が適用されます。 土地建物の譲渡所得は、譲渡収入から取得費と譲渡費用を差し引いた金額であり、建物の場合は減価償却を考慮します。株式等の譲渡では、取得費と譲渡費用、借入金の利子が控除可能です。