あまりに親イスラエルなトランプ、それゆえにガザでの停戦が進むという現実
■ ウクライナ戦争は強制終了か ──第一次トランプ政権を見ると、一発目は強いことを言いますが、相手から反応や反撃があると、話し合って、意外と無難なところに落とし込んでいったという印象もあります。 渡辺:キャンペーン・トークとして高い数字をまず提示して、だんだん妥協点を探っていく。交渉の戦術としてはあり得ると思います。ですから、関税60%を本当に追求するかは分かりません。ただ、ここまでキャンペーン中に強行姿勢を示した以上、拳を急に振り下ろすことも難しくなると思います。 ──ウクライナ戦争やイスラエルを中心とした中東の情勢に対して、アメリカがこれからどのような態度を取っていくのか。今回の大統領選の結果次第で、大きく方針が変わる可能性があります。 渡辺:「ウクライナはヨーロッパの問題である」というのがトランプ氏の見解で、その分、アメリカはメキシコとの国境の管理に注力すべきだと考えています。バイデン政権と比較すると、ウクライナ支援には消極的になる可能性があり、もしかすると、強制終了に近い形で停戦交渉に持ち込もうとする可能性さえあると思います。 そうなれば、結果的にロシアが得をすることになる。いったん停戦して矛を収めたとしても、何年かしたらウクライナや他の東欧地域に「ロシアがまた侵攻するかもしれない」という不安が残ると思います。 しかし一方で、ウクライナ戦争は既に2年半ほど続いている。だから「とりあえずいったん停戦しよう」というきっかけにはなるとも言えます。 中東情勢ですが、アメリカの中や、国際社会の中では、イスラエルに自制を求めていますが、トランプ氏は「イスラエルに自制を求めるべきではない」「むしろ支援を強化すべきだ」「今こそイランの核施設を爆破すべきだ」と言っています。 これだけ親イスラエルだとネタニヤフ首相も聞く耳を持ちますから、より説得しやすい立場にいます。 数日前に、トランプ氏はネタニヤフ首相と電話で話して「自分が大統領に就任する前に戦闘を終了してほしい」と伝えています。中長期的な影響は別としても、まずイスラエルとガザの戦闘は止める。地域情勢を安定させるという意味では、バイデン・ハリス政権より、むしろトランプ政権のほうがいいという見方もあります。