透明人間と目が見えない女性が繰り広げる“じれキュン”ラブコメ。トキメキ満載の『透明男と人間女』【書評】
人間だけでなく、異なる種族の人々が“普通に”生きる世界。そこで暮らす透明人間の男性と目が見えない人間女性の穏やかな恋を描いた作品が『透明男と人間女~そのうち夫婦になるふたり~』(岩飛猫/双葉社)だ。 【漫画】本編を読む
物語の舞台は、透明人間の男性・透乃眼あきらが所長を務める透乃眼探偵事務所。ここには探偵のあきらを筆頭に、獣人女性の写螺子と人間男性の鬼木羅、そして人間女性の夜香しずかという、バラエティに富んだスタッフが揃っている。 中でもおっとりした性格のしずかは目が見えない人間の女性で、現場で働く3人をしっかり後方支援する優秀なスタッフだ。思いやりのあるサポートができ、目が見えない分、嗅覚や聴覚に優れ、他者の変化にも敏感な彼女。そんなしずかにあきらは仕事のパートナーとしても、そしてひとりの女性としても魅力を感じていた。 同時にしずかもまた、あきらを頼りがいのある上司、かつ魅力的な男性だと感じている様子。そんなふたりが個性の違いに最初は戸惑いつつも、少しずつ互いのことを理解し合い、1組の恋人へ、そして夫婦へとなっていく。本作はその様子を、温かなタッチで描いた物語だ。 やはり作品の最も大きな魅力は、穏やかかつ随所にトキメキが満載なふたりの恋模様だろう。透明人間としてのメリットを探偵業に活かしつつ、デメリットも抱えるあきら。だがしずかは、そんな彼の不安や悩みに真摯に向き合い、ふたりらしい未来へと進んでいく。彼らを見ていると、まさしく出会うべくして出会ったカップルだと感じる人も多いに違いない。 男性として、そして上司としても理想的なあきらだが、しずかのことになると普段の紳士な態度に加え、ストレートな愛情表現や時に大胆な行動に出る一面も、読んでいてキュンとするポイントだ。 また状況としては、いわゆる職場恋愛ともなるふたり。同じ仕事に勤めるからこそのときめきシチュエーションや、オンとオフの過ごし方の違いも、ふたりにとっては良い恋のスパイスともなるのだろう。 徐々に距離を近づけていき、晴れてお付き合いを始めた後も、初めてのデートやお泊り、そして将来の結婚を考えた同棲など。恋人としての段階を少しずつ踏んでいく様子を見て、なんだかこちらもほっこりしたり、癒されるような気持ちになったり。いつまでもふたりの恋路を温かく見守りたくなるような、そんな物語だ。 文=ネゴト/ 曽我美なつめ