国王戴冠式で注目された「英王室御用達」12世紀から続く信頼の証の裏には厳格なルールがあった
エッティンガー氏は認定の効果に関して「プラスの影響しかない。ロイヤルワラントは承認、品質、信頼の証だ」と強調し、海外事業の強化にもつながったと説明した。米国は参入が難しい市場だったが、王室御用達となった年に商談に行くと、先方から「これは素晴らしい!オーダーするよ」と歓迎され、新たな扉が開けたという。 ▽注目はウィリアム皇太子ブランド 「ホルダー」と呼ばれる認定保持者は厳選された約800に上り、毎年20~40の入れ替わりがある。協会のサイトで検索でき、高級ファッションブランド「バーバリー」や陶磁器の「ウェッジウッド」、高級自動車「ベントレーモーターズ」などが確認できる。ソニーの現地法人も名を連ねている。 近年はエリザベス女王と、夫で2021年4月に亡くなったフィリップ殿下、皇太子時代のチャールズ国王の3人の名で認定されてきたが、女王によるものが大部分を占める。女王は昨年9月に亡くなった。死後2年間は猶予期間として紋章を使うことが許されている。今後は新たに、ウィリアム皇太子の認定ブランドが登場する可能性があり、注目されている。
御用達制度は英国以外にもある。ベルギーでは高級チョコレートの「ゴディバ」が、デンマークではビール醸造会社「カールスバーグ」が認定されている。王室御用達としてのブランドを通じて、それぞれの企業のイメージアップにつながっている。 ▽「宮内庁御用達」は戦後に廃止 日本でも「宮内庁御用達」をうたう菓子や日用品、かばんなどを見かけることがあるだろう。だが意外にも、御用達を認める制度は既に廃止されている。明治24年(1891年)に宮内省(現在の宮内庁)が商工業の振興を目的に「宮内省用達称標出願人取扱順序」という内規をつくったのが始まりだった。 形を変えて続いたものの、戦後の昭和24年(1949年)を最後に新規の許可や更新を認めておらず、宮内庁は現在「御用達というものを認めることはしていない」との立場を示している。広告・表示の適正化に取り組む公益社団法人「日本広告審査機構(JARO)」は「歴史的事実として表示するような場合を除き使えない」としているが、不当な表示などでなければ黙認されているのが実態のようだ。