国王戴冠式で注目された「英王室御用達」12世紀から続く信頼の証の裏には厳格なルールがあった
▽基準を満たさなければ認定取り消し 英王室御用達の歴史は古く、1155年にさかのぼる。起源は、ヘンリー2世の時代に公式の勅書を業者に与え、ロンドンでの繊維取引の独占的な管理を認めたこととされる。その後も御用商人は王室のそばに控え、王室とともに繁栄の果実を享受してきた。 現在の御用達制度につながる「ロイヤルワラントホルダーズ協会」は1840年に発足した。世界各地で植民地を広げ、栄華を極めた大英帝国の象徴であるヴィクトリア女王の時代だ。 協会は王室に商品を納める事業者からの申請を厳しい基準で審査し、ロイヤルワラントの称号にふさわしいかどうかを見極める。認定期間は最大で5年。基本的に5年ごとに再審査を受けなければならず、不適格と見なされると取り消される。そうすることで信頼や品質が担保され、王室ブランドの価値を一層高めている。 ▽通勤方法、飛行機のクラスも審査対象 高級革製品ブランド「エッティンガー」もその一つだ。1996年にチャールズ皇太子(当時)から御用達のお墨付きをもらった。今年4月、ロンドンで取材に応じたロバート・エッティンガーCEOがロイヤルワラントを保持する栄誉と、それまでの苦労について語ってくれた。
認定を受けるには、少なくとも5年間継続して商品やサービスを王室に提供する必要がある。エッティンガー氏によると、会社として地球環境のためにどのような活動に取り組んでいるかを示す文書も提出しなければならない。 その中では詳細な報告を求められる。例えば、従業員はどのように通勤しているのか。自転車通勤と車通勤はそれぞれ何人か。飛行機ではエコノミー、ビジネス、ファーストクラスのどれに乗るのか、などの質問項目が並ぶ。環境保護活動に熱心なチャールズ皇太子が主導した取り組みという。 ▽認定が米国市場の足掛かりに エッティンガーは、認定を受けるため工場の設備を見直した。英国内にある工場は1890年の建設で、多くの窓があった。建物の断熱性を高めるため二重窓にして屋根も新しくし、照明には発光ダイオード(LED)を導入した。エッティンガー氏は「ロイヤルワラント取得の過程で、二酸化炭素の排出量を減らすために何をするべきかをより意識する良いきっかけになった」と指摘した。 認定取得後も、厳しいルールに従いロイヤルの紋章を扱わなければならない。何が認められ、何ができないのか、分厚い冊子に事細かく定められているという。例えば、紋章はブランド名の下に付けてはならず、上か横に置かなければならない。エッティンガーが金融機関の注文で製品を作った際、純粋な製品ではないため紋章を付けることができなかった。