国王戴冠式で注目された「英王室御用達」12世紀から続く信頼の証の裏には厳格なルールがあった
王族や皇室、宮中に物品を納める「御用達(ごようたし)」。英国では12世紀に起源があり、伝統を今も受け継いでいる。王室を意味する「ロイヤル」の称号を得ることは、伝統を重んじる英国企業にとって最大の誉れだ。5月にチャールズ国王の戴冠式が挙行された際には王室御用達の店に国内外から多くの観光客が訪れ、英国ブランドの発信に一役買った。長年にわたって優れた品質と安心感の証となってきた制度の裏には厳格なルールがある。(共同通信=宮毛篤史、井島星香) ▽ロイヤルの紋章は観光スポットに 首都ロンドンの中心部にあるバッキンガム宮殿は英王室の権威を象徴する。チャールズ国王夫妻らロイヤルファミリーのメンバーが戴冠式後に姿を現し、バルコニーから聴衆に手を振った。その宮殿近くの公園から繁華街のピカデリーサーカス駅へ向かう道には、王室御用達を意味する「ロイヤルワラント」の称号を持つ店が軒を連ねる。 高級食品や雑貨を扱う老舗百貨店「フォートナム&メイソン」は、その代表的な存在だ。創業したのは1707年、日本では伊勢名物で知られる「赤福」が誕生した年だ。通りに面した店の壁には、認定を受けたことを示す「ロイヤルアームズ」と呼ばれる紋章が掲げられ、観光客の写真スポットとなっている。
▽人気グッズは国歌斉唱のオルゴール フォートナム&メイソンは英王室と300年もの交流があり、独自の決まりがある。トム・アスロン最高経営責任者(CEO)は「君主が亡くなると屋上で飼育する蜜蜂にそのことを伝えることになっていて、エリザベス女王が昨年亡くなった時は従業員が伝えに行った」と話した。 チャールズ国王の戴冠式の前日に店舗を訪れると、鳥のさえずりがBGMとして流れ、再生紙で作られた鳥や木、花などの模型が飾られていた。環境保護活動に熱心なチャールズ国王に敬意を示すものだ。戴冠式のために作られた紅茶の缶もリサイクルされたもので、英連邦をはじめとする世界各国の動物が描かれた。 戴冠式に合わせたグッズで特に人気なのが、オルゴール型のビスケット缶という。底のねじをひねると、国歌「ゴッド・セーブ・ザ・キング(神よ、国王を守りたまえ)」が流れる。グッズは今年いっぱい販売予定で、アスロン氏は「王室との関係に誇りを示すことができるように最高の仕事をしたかった」と話した。