EV開発で大注目! 結局「全固体電池」は何がスゴいのか
全固体電池の特徴と開発動向
現在、環境対応車である電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の需要が世界的に大きく伸びているが、EVやHVには充電池であるバッテリーを搭載する必要がある。自動車の駆動用バッテリーはリチウムイオン電池が主流だが、次世代バッテリーとして「全固体電池」の開発が加速している。 【画像】えっ…! これがうわさの「全固体電池」です(計16枚) リチウムイオン電池は自動車だけでなく、スマートフォンや家電製品など幅広い製品に使われており、2000年代に入るとその普及が加速した。 その特徴は、従来の電池に比べてエネルギー密度が高く、小型・軽量で利便性に優れていることだ。高いエネルギー密度はEVの駆動用バッテリーにも利用されており、航続距離を伸ばすためにはリチウムイオン電池は欠かせない。しかし、電池内部のリチウム系電解液が発熱し、発火する可能性があるという欠点がある。 欠点を克服するために現在開発中の「全固体電池」は、構造的に発熱や発火が起こりにくい。従来の電池は主に電解液を使用していたが、全固体電池は液体を使用せず、電解質がすべて固体であるため安定性が高い。また、温度上昇による発火にも強いため、幅広い用途に使用でき、劣化や液漏れの問題も起こりにくい。 ただし、液体電解質に比べると伝導性が低いため出力が低いなどの問題点もあるが、研究開発によって徐々に克服されつつある。 全固体電池自体はすでに実用化されており、小型家電用バッテリーにも採用されているが、大型製品の技術としてはまだ研究段階であり、車載用バッテリーとしての今後の技術開発が待たれる。
量産化への期待
自動車用の全固体電池の開発で国内最大手のトヨタ自動車も実用化に取り組んでいるが、共同開発に名乗りを上げたのは石油大手の出光興産だ。 トヨタと出光興産は、将来の量産車への搭載を視野に入れ、2023年10月に全固体電池を量産するための協業を発表した。トヨタはHVに力を入れているメーカーであり、電動車のバッテリーは非常に重要な要素である。同社は将来のEV量産を見据え、2006(平成18)年から全固体電池の開発に着手している。 出光興産は石油元売り・石油化学のイメージが強いが、全固体電池の開発で先端技術の特許を多数保有しており、石油から製造する硫化物系固体電解質の開発に注力している。この両社の協業により、全固体電池の技術開発が急ピッチで進むことが期待され、大まかなロードマップも発表されている。 トヨタと出光興産の計画では、2027~2028年頃の全固体電池の実用化を目指しており、開発は3フェーズに分けて行われる。 第1フェーズは、全固体電池の心臓部である固体電解質の開発で、硫化物系固体電解質を採用するため、品質、コスト、量産技術に磨きをかける。第2フェーズでは、第1フェーズで培った技術をベースに量産設備を開発し、第3フェーズでは本格的な量産化の可能性を検討する計画だ。 また、両者の技術の融合により、耐久性を低下させていた電極材料のクラック問題を克服できるめどができたという。環境保護の観点からも、EVやHVなどのEVの量産化は喫緊の課題であり、今後数年間の両社の動きは大いに期待できる。