赤坂アカ「【推しの子】って何だったんだろう?」作者が語る“ひとりじゃ絶対できない作品”だった理由
『【推しの子】』とは何だったのか?
――まさに連載を終えたタイミングだからこそ考えられることですね。 『【推しの子】』の意義というか、この作品を通して何を表現したいのかは最初から決まっていました。それは「ディスコミュニケーション」。つまり、「人と関わるとは、どういうことなのか」ってことですね。 とくに『【推しの子】』が描いたアイドルとファンの関係性って、自然に反しているような歪な部分がそもそもあると思うんです。そういう扱いが難しい歪なものに対して、健全な心で向き合うにはどうしたらいいのか? それを描くことが、つまり「コミュニケーションを描くこと」なのかなと思いました。 そのうえで、作者として「これを読んだ人が現実世界に少しでも何かを持って帰ってきて、参考にしてもらえたら嬉しい」という気持ちもやっぱりある。そういう点では、『かぐや様は告らせたい』(以下、『かぐや様』)も同じテーマを描いていたと思います。 ――たしかに。『かぐや様』はユーモラスな形ではありますが、最初からディスコミュニケーションが明示されていましたね。 「人と人とのコミュニケーションにおいて、うまく関係を持つことができない」人たち。それはずっと僕が一貫して描き続けたいものでもあるので、結局そこに帰結するんじゃないかなと思います。それは『【推しの子】』で描いたような、業界内でのコミュニケーションだったり、ファンとアイドルのディスコミュニケーションだったりも、そう。 「こんな人たちが、お互いに少しずついいアプローチをできるようになったらいいな。そうなってほしいな」と思って描いた、「願い」のある作品。それが『【推しの子】』なんじゃないかと思います。 ――まさにそこは赤坂先生の作家性だと言えるのではないかと思います。でも、ここまで先生が「人と人のコミュニケーション」に真正面から取り組むのには、何かきっかけなどあったのでしょうか? 僕は人とコミュニケーションを取るのが上手ではないんですけど、周りの人たちからはけっこう「コミュニケーションが上手」と言ってもらうことが多いんです。