【オートレース】若手のお手本・金子大輔「(スタートレベル引き上げに)本気で研究と練習を繰り返しました」…浜松G1ゴールデンレース3日目
◇浜松オート開場68周年記念G1ゴールデンレース(3日目・10日) 2004年にデビューしてから、今年でちょうど20周年。今や金子大輔は若手プレーヤーたちの最高のお手本、教材となり、多くの後輩たちから尊敬の念を集める存在となった。 2日目11Rだった。現在、ノリに乗りまくって、一気に業界の頂点を狙おうとしている佐藤励は、手塩にかけてきっちり仕上げた愛車で挑んだ。しかし、目の前に金子が立ちはだかり、まるでねじ伏せられるように2着に敗れた。レース後、佐藤は逆にすがすがしい表情でこう言った。「いやあ、エンジンは絶対に僕の方が強めだったのに~。金子さんの腕に負けてしまいました~! なんかもう一枚、二枚ぐらい金子さんの技術が自分よりも上でした。一緒に走っていて、オーラを感じてしまいましたよ。金子さん、うますぎです! いい勉強をさせていただきましたよ!」 気鋭のチャンピオン候補が脱帽していたことを金子に伝えると、実に満足げだった。「まあ、そりゃあそうでしょ~! 自分はもう20年もやってきましたからね! まだデビューして3年目ぐらいの選手に簡単にやられるわけありませんからっ!(究極のドヤ顔で)」 佐藤だけじゃない。ここ最近になって最重ハンデに定着してきた山陽34期生の山本翔も大会中に、「自分はずっとオートレースのファンだったんですが、選手になってから金子大輔さんのすごさがわかりました。うまいし、尊敬しています」と話していた。 そのことも金子の耳に入れると、ここでも非常にご満足な様子で、「グループとか関係が近い後輩に言われるよりも、山本君みたいにそんなに接点がない選手からそう言われるのは、ああ見ていてくれているんだなあと、うれしくなりますよね」とプロの貫禄を漂わせていた。 レースが美しくもていねいで、どんな難しい戦況にも悠々と対応できる。あらゆる局面で最高レベルの技巧を繰り出して、しなやかに結果をたぐり寄せる。まさに、業界トップのオールラウンダーだが、そんな金子に唯一の弱点があるとすれば、それはスタートだった。しかし、ここ1、2年で彼はスタートの精度を一気に高め、今やSG大会の重要な丁場でどんなダッシュ巧者と横並びになっても、問答無用に先行していく。 なぜ、この期に及んで金子はスタートレベルを格段に引き上げることができたのか。改めて本人に聞いた。 「正直、以前はそこまでスタートに依存していませんでした。別に道中でやり返せばいいわけですからね。でも、何年か前から導入された現在のタイヤになってから考えが変わりましたよ。現行のタイヤはとにかく食いつきません。一年中、夏場のレースを走っているみたいに、タイヤがグリップしてくれない。だから、前みたいに道中で追い上げることがなかなかできなくなってきて、成績にも影響が出てきました。もう、ある程度はスタートを行っておかないと勝負にならないので、本気で研究と練習を繰り返しました」 こうして才能高き男は、他の選手では実現できえないような短期間でスタートを逆に自身の武器にすることを可能としたのである。 「まあ、あれは真剣に取り組みましたからね! もしも、自分がもっと体重が軽かったら、マジですごいことになっていたんじゃないですかね!(この日一番のドヤ顔で)」 今年は2月の全日本選抜オートレースで約9年ぶりとなる3つ目のSGタイトルを獲得した。もともと備えた高い素質をきっちりと消費して、経験とキャリアを重ね続けて、「レーサー金子大輔」は、ここにいよいよ完熟の時を迎えた。 若かりし頃は、物おじしないとんがった性格でおっかない先輩たちに対しても、一歩も引かず、己の信念を貫いて、我が道を力強く歩んできた。「昔はワル目立ちしていましたからね(苦笑い)。もっと、おとなしくしておけばよかったですね(さらに苦笑い)」 若い頃のヤンチャなキャラも、現在のちょっとだけ成熟したアダルトバージョンも、いつでもどこでも、そのどれもこれもが周囲の目を引き寄せまくり、常に集団で目立ちまくる完全主役キャラの金子さん。 同じ29期生の岩見貴史も「自分は金子君のことは本当に心から尊敬しています。教えることが上手だし、弟子を取ったらいい師匠になると思うんですけれどね」と敬愛を込めて力説していた。 「あっ、ひとに教えること、マジで自分は得意ですから!そこは自信ありますから!」 最後の最後まで金子節で締めてくれましたが、何というか金子さんの超前向きで自信にあふれ、人生のすべてを全力で楽しんでいる姿、あの篠崎実御大とかなりだぶります。 今後、とてつもないレジェンドな領域に突入していくような予感しかしません。 すごい男です、我らがキンちゃんは。(淡路 哲雄)
報知新聞社