第162回芥川賞受賞会見(全文)古川真人さん「何でこうなっちゃったんだろう」
4回目での受賞をどう思うか
共同通信:共同通信の瀬木と申します。このたびはおめでとうございます。先ほど、なんでこうなっちゃったんだろう、この先どうなっていくんだろうという心境を語っていらっしゃいましたけれども、4回目で、これまで煩わしさもお感じになられていたとおっしゃっていて、その中での受賞をなさったということで、うれしいとか、あるいはほっとするとか、その辺の、どういう感情で今、いらっしゃるかを教えていただいてもよろしいですか。 古川:うれしさっていうのはまだないです。おそらく2日後とか3日後とか、それこそ、本当に生活が日常に返っていくと、たぶんしみじみ、あるいは風呂でシャンプーしててほくそ笑む、みたいな感じでなるんだと思うんですけども、今のところはまだうれしいっていうところを、自分の中でしみじみ味わえてるっていうものはないんですけれど、でも同時に、自分が候補になるたびに喜んでくれている人っていうのがいまして、そういう人たちが今、喜んでくれてるんだろうなっていうのを思うと、やっぱりこれはうれしいことなんだろうなというふうには分かってはいるっていう、そういう感じです、今は。 共同通信:ちなみに、その喜んでくれる人っていうのは、担当の編集者の方だったり、あるいはご家族だったりもするかと。どういった方々のことを思い描いていますか。 古川:大学の知り合いだったり、高校の知り合いだったり、中学の知り合いだったり、あるいは親族ももちろんありますし、そういう人たちです。 共同通信:ありがとうございます。 司会:ありがとうございます。ほかにご質問のある方。じゃあ、あちらの右手側の眼鏡の方。すいません、その手前の、その方にお願いしたいです。お願いいたします。
今後どういう作品を書きたいか
日本経済新聞:すいません、日経新聞の【マエダ 00:10:37】と申します。このたびは受賞、おめでとうございます。 古川:ありがとうございます。 日本経済新聞:選評のほうで長崎の平戸と思しき島が評価され、かつもっと、島田さんが、書けるのではないかといったお話があったと思うんですが、今後はどのような作品をお書きになられますかね。 古川:まだ具体的にこうだっていうのはないんですけれども、やはり島から出てみたい、あるいは島のことだけを繰り返し繰り返しずっと書くと、ていうか、今もうすでにして繰り返し繰り返し書いちゃってるわけなんですけど、あまりそれを続けると手癖っていうか、自分自身の中で今まで触れてこなかったものや、触れたくなかったものみたいなものを無視して、自分にとって一番書きやすいものを延々書いてしまうのではなかろうかと思いまして、それがやはり自分は恐れるわけです。だから、もし今後書くんだとしたら、自分にとって不慣れなものというか、自分にとってまったく未知の他者が現れるようなものを書いていくことにしようと思っております。 司会:ありがとうございます。では、すいません、ひげを生やしてらっしゃる方。