無風に終わった日本人移籍。レ軍が上原、田澤を放出しなかった理由とは。
米大リーグは、ウェーバー公示を経ないでトレードが可能な7月31日(米国東時間午後4時=日本時間8月1日)のトレード期限を終了。今年のトレード市場で注目を集めていたレッドソックスの上原浩治投手、田澤純一投手の両投手は、チームに残留、無風に終わった。昨年は、トレード期限の残り48時間で怒涛の7選手を放出したレ軍。2年連続で優勝争いから脱落し、立場的には今年も“売り手”となるはずだったが、25日にビクトリーノをエンゼルスに放出した以外、目立った動きはなかった。 今季レ軍と2年連続総額1800万ドル(約21億円)の契約を結んだ40歳右腕は、年齢による衰えを指摘する声もあった中、レ軍の守護神として活躍。30日の時点でセーブ機会の登板で24回中22度成功と健在ぶりを証明していた。また、今季14ホールドの田澤も安定した成績を残し、評価を高めていた。2人とも2013年にワールドシリーズ優勝に貢献したプレーオフでの実績もあり、トレード市場で引っ張りダコと盛んに報じられたが、結局、チームに残留。王座奪回を目指してチーム再建に着手すべきレッドソックスが傍観者の立場に徹し、かなりの有望若手を交換要員で獲得できると言われながらも、上原と田澤を手放さなかったのは、なぜか。 締め切り時間から1時間後、本拠地フェンウェイパークで会見したチェリントンGMは、「誰が市場で人気になるかを予想することは簡単だが、我々はそこで慎重に考えなければいけなかった。2人(上原と田澤)は安定していて、我々が頼れる貴重な財産であり、この2人はこの先、チームに必要な戦力だった。まず、先発投手と守備を強化するという任務を遂行する中で、チームの戦力として計算している選手を動かすことは、非常に難しい。だから、(放出は)考えなかった」と語り、チーム再建の上で、上原と田澤は動かせない駒だったと説明した。
FAまでまだ1年残っている両者を放出した場合、その代役を同じ価格帯で見つけてくることもまた難しいという判断が働いたかもしれない。昨年はレスター、ラッキーら人気選手を数多く手持ちカードに抱えてトレード市場に乗り込み、主役になったチェリントンGM。今年は初めから手持ちに他球団が欲しがるカードがない中、唯一の絵札が上原と田沢だったが、その2枚のエースを切ることはなかった。 また、同GMは最近の傾向として、特に先発投手に関して各球団が若い有望選手を手放さず、財産として一人前になるまで保有する意向が強まっていることを指摘した。FA市場に出回る先発投手陣が長期大型契約になりやすくコストがかさむ一方で、期待はずれに終わるリスクも増えていることから、有望な先発を簡単には手放そうとはしない。少なくとも、先発投手市場でレ軍が理にかなうと判断したトレードは実現しなかった。 チェリントンGMは「今回は引き金を引く段階ではなかった。我々は、今週中に何とかしなければダメだとは思わなかったし、これが解決だとも思っていない。私たちには今から来年の開幕までにまだチームを改革する任務があるのだ」と語った。 レ軍が下したのは「動くのは今ではない」という決断。今回は出費に見合う人材を得ることはできなかったが、オフには再びトレードやFAで大物先発投の市場が活発化する。上原&田澤という2枚の切り札を、その手に残した同GM。その手腕やいかに。締め切り時間午後4時には、グラウンドに出て普段通りキャッチボールなどの練習を行った上原と田澤。投げる試合は消化試合であれ、レッドソックスのユニフォームを着て挑む残り2ヶ月は、その資産価値を改めて内外に示す大事な時間になる。