サッカー五輪・大岩剛監督「アジア対策ではなく、どの相手にも対応できる力を」
外れることを怖がらない。そんな思考やアクションが試合を動かす
――Z世代のコミュニケーションはほかの世代と異なりますか? 「それはよく聞かれますね。でも特に意識してないし、その最適解を僕は持っていないと思います(笑)。その言葉自体も、この世代を指導するようになってから初めて認識した感じですから。年齢によって接し方を変えるということはないですね。鹿島で監督をしていたときも、対応を変えることはなかったし。組織を前進させるためには公平性が重要だと思っています。ベテランへのリスペクトはありますが、あくまでも選手同士、会社のように役職が違うわけではないので」 ――監督はコーチほど選手との距離感が近いわけではない。 「そうですね。クラブなら、クラブハウスで声をかけたり、共に過ごす時間も長いですけど。代表はそういう機会も少ないので。それでも、意見を言ってくれたり、話しかけてくれる選手はいますよ」 ――今の若い世代は真面目だという話を訊いたことがあります。 「そういう面はあるかもしれませんね。昔は個の強い選手がいましたからね。突拍子もない選手はいないかもしれない」 ――チームとして、選手主導で積み上げてくれたら良いなと思っていますか? 「それはもちろん。そういうのは必要だと思う。選手同士で『監督はああ言っているけど、こうやったほうが良いと思うから、やっちゃおうぜ』みたいな空気は必要だと思います。ただ、チームの規律を無くしてしまうのはダメです。チームの基準を保ったうえで、判断できる力を選手には求めてきました」 ――今の時間帯はキツいから、一旦下がって、整えようみたいな選択を選手自らが行えるグループでいてほしい? 「もちろん、そうですね。ただ、そういうのも僕から、ある程度『こうなったら、こういう時間があってもいいよ』ということを提示しないと、動けない傾向があるようにも感じます。昔の僕らの世代なら、選手だけで、やっちゃう感じでしたが、それさえも監督からの言葉が必要なのかもしれないなと思います」 ――それだけ、チームの規律というものが重視されているのかもしれませんね。 「確かにチームにおいての基準や規律を求めているのも事実だけれど、そこからはみ出すような突拍子もない選手が試合を動かし、結果を出すこともあります。だから、それを求めているところもあるので、メッセージを削って、削って、シンプルにして、言い過ぎないというのは、そういう意味もあるんです。僕らが用意するプランが多すぎてもいけない。その少ない選択肢の中から、選ぶということも選手に求めている。選手たち自身で、何かを起こしてほしいので。サッカーというスポーツのルール上、監督の提示したことから外れた対応をすることは必要です。それは絶対なくならない」 ――事故みたいなことが起きるのが試合ですからね。 「選手の退場をはじめ、想定外のことが起きてしまう。でも、試合は止まらない。バスケットボールのようにタイムアウト制度もなく、監督が直接指示を出せるわけでもないので。そういう意味では、想定外のことは起きてほしくはないけれど、そういうときに想定外の思考やアクションを起こすことは、非常に重要かもしれません、突拍子もないって言い方をしたけれど、外れることに、怖がらないことも選手に求めたい。そのうえで、規律も守れともいうわけだから、そう単純な話ではないですが(笑)。だから、監督としてはそのバランスが大切になるんだと思います。提示もしなくちゃいけないし、提示しすぎてもいけない。これはZ世代に限らず、どの年代でも必要なことですね」