他府県からも注目 愛知・奥三河の奇祭「花祭」の魅力とは
毎年11月第2土曜日から翌年の3月まで、愛知県の東栄町周辺で開催される「花祭」。鬼がワルモノではなく主役として登場し、夜通し舞い続ける“奇祭”だ。他府県から訪れるファンも多く、会場には魅力を感じて来たというアメリカ人男性の姿もあった。20年以上祭りの風景を撮り続けるプロカメラマンもいるほどの「花祭」だが、いったいどのような魅力があるのだろうか!?
“舞手”は成人男性から幼い少女までさまざま
花祭とは鎌倉時代から700年以上にわたって伝えられ、悪霊払い除け、神人和合、五穀豊穣、無病息災を祈る神事で、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。愛知県奥三河地域の東栄町を中心に豊根村と設楽町の15の集落で約3か月にわたり開催。集落により異なるが、約40種類の舞が夜通しで行われることが多い。 舞を踊る“舞手”は、成人男性から幼い少女まで老若男女さまざま。特筆すべきは“鬼の舞”である。舞手は神様という扱いなので、花祭に登場する鬼は神様という主役。大きな鬼の面に全身赤装束で、ゆったりとまさかりを振りながら踊る舞は、勇ましく神々しい。舞の種類によって鬼の装束も変わり、さらには集落によって鬼の顔も異なる。 花祭は地元住民だけではなく近年は他府県から訪れるファンも多く、11月14日の東栄町御園地区の花祭にはアメリカ人男性の姿も。「今年で3回目。場所(集落)によって鬼の顔が違うから面白い」と、複数の集落の花祭に参加する楽しさを教えてくれた。
写真家「伝統の中に見る幽玄の美が垣間見られます」
花祭会場には一眼レフカメラや動画撮影をするカメラマンも多い。その一人であるプロの写真家・山之内博章さんは、花祭を27年間も撮影している。「私が撮り続けているのは豊根村上黒川地区の花祭です。冬の一晩、全国八百万の神々を招いて老若男女が夜を徹して舞い踊り、日本人が古くから守り受け継いできた信仰や伝統の中に見る幽玄の美が垣間見られます。また、地域の人々の情熱や人情にも引かれました」と魅力を語る。 花祭は年に一度の行事だが、山之内さんは準備期間から訪れているよう。「本番以外にも舞い習い(練習)や切り草(花祭りの準備)の撮影もしています。長い年月を重ねて、地元の方々との親交も深めてきました。花祭は私自身の写真史でもあり、もはや地元の方々の成長の記録にもなっていると思います」。毎年撮影を続けることで、写真枚数と共に温かな交流も重ねているようだ。