ドラマ『団地のふたり』が浮き彫りにする50代女性のリアルとは? 小泉今日子と小林聡美をテレビで観る喜び。解説レビュー
「出戻り」が歓迎される時代
そしてその3は『アラフィフの実家住まい』。ノエチは大学のバツイチで、大学の非常勤講師。なっちゃんは一度、実家から出たものの、家庭の事情やイラストレーターの仕事もうまくいかず、戻ってきた。 ひと昔前なら離婚や、経済的なことを理由に実家へ戻ってくる独身勢を「出戻り」と呼んで、近所の井戸端会議のネタになることが多かった。が、高齢化社会の今は違う。前述のように70~80代の先輩たちをケアすることになり、重宝がられるのだ。ノエチが両親と暮らす様子を見ていても、不自然な点はなく、むしろ微笑ましい。感覚は変わった。 実際、私の周囲にも実家住まいの中高年女性はたくさんいる。転職を重ねて収入が減ったことを理由に出戻る、両親が高齢化していく将来を見据えて、バツイチ女性が実家に戻るパターンなど、状況はさまざま。皆、快適そうに暮らしている。 中には両親との諍いが絶えなくなり、また実家を出ていく人もいるけれど、もう独身が実家住まいということに後ろめたさを感じる必要はない。2020年の国勢調査でも、実家住まいをする20~40代の未婚男女の割合は60%にのぼるという、データもあるくらいなので、もう一般的なことなのだ。 と、いくつものリアリティ性が詰まっている『団地のふたり』。こういう作品が今後増えてほしいと願わんばかり。 【著者プロフィール:小林久乃】 出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーション業などを生業とする、正々堂々の独身。
小林久乃