【シンガポール】日本公庫、DBSと中小企業の資金調達支援
日本政策金融公庫(日本公庫)は27日、シンガポールの金融最大手DBS銀行と「スタンドバイ・クレジット(信用状)制度」に関する業務提携契約を締結した。アジアで事業展開する日本の中小企業の現地法人が現地通貨建てで融資を受けやすくなるようにする取り組みの一環となる。 DBS銀行と結んだ今回の契約は、シンガポール、中国、香港、インド、インドネシア、台湾の6カ国・地域が対象となる。対象国・地域に現法を持つ日本の中小企業は、日本公庫が債務保証のために発行する信用状をもとに、DBS銀行から現地通貨建ての融資を受けることが可能となる。 スタンドバイ・クレジット制度では、融資を希望する日系中小企業が、まず日本の親会社を通じて日本公庫に信用状の発行を申請。海外現法は発行された信用状を担保に、同公庫が提携する現地の金融機関から融資を受ける。現法が債務不履行に陥った場合は日本公庫が債務を補償し、その後、日本の親会社に債務を請求する仕組みだ。 日本公庫はこれまでに中国、台湾、韓国、インド、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン、メキシコなどの国・地域で16社の金融機関とスタンドバイ・クレジット制度に関する業務提携契約を締結した。シンガポールでは2013年にUOB銀行と同様の契約を結んだ。これまでの提携では金融機関1社につき、1カ国・地域のみを対象としていたが、複数の国・地域を対象とするのは今回の提携が初めてとなる。 日本公庫が取引のある中小企業の海外法人数は現在約1万社で、中国が約3割、東南アジアが残りの約7割を占める。個別では中国に続いて最も多いのがタイで、これに米国、ベトナム、台湾、シンガポールが続く。シンガポールは384社で、業種別では製造業が36%、卸売業やサービス業などの非製造業が約64%という。 日本公庫の米田健三専務はNNAに対し、「日本の人口減少や市場縮小によりアジアを中心とした海外へ進出したいと考える企業が増えている。今回提携したDBS銀行が重要市場と位置付けている6カ国・地域は、われわれの取引先企業が関心を持っている市場とも重なりがある」と説明した。 今後については、「日本の中小企業は海外との向き合い方について大きな転換期を迎えている。東南アジア最大規模の金融機関であるDBSとの提携を通じ、ネットワークだけでなく同行が強みとするデジタル化や持続可能関連のソリューションも取り込み、日本企業の海外展開支援をレベルアップしていきたい」と述べた。