日本経済に「明るい兆候が」…岸田首相、本誌取材に語った「GDP4位転落」の理由と、賃金・移民のこれから
北朝鮮との懸案解決に向け首脳会談を行う方向で努力を
──日本の政府関係者が安全保障上の脅威としてよく挙げるのは、高度なミサイルシステムの実験を続けている北朝鮮だ。経済制裁は効いていないようだが、あの国に対処するには何がベストだと思うか? 北朝鮮の核・ミサイル開発は、日本のみならず、国際社会の平和と安全保障にとって脅威だ。北朝鮮の非核化を求める国連安保理決議の完全な履行が必要だと思う。 この件に関しては、3月28日に北朝鮮に対する制裁状況の実施体制について調査する専門家パネルの任期を延長する決議案が安保理に提出されたが、ロシアの拒否権行使で否決された。これは極めて遺憾だ。 日本としては、当該の安保理決議の完全履行に向け、アメリカや韓国、そして志を同じくする国々と、これまで以上に緊密に連携しながら、さらなる働きかけを検討していく。 先日のバイデン大統領との会談では、核・ミサイル開発を含む北朝鮮情勢についても協議した。その際、非常に憂慮すべき現状を受け、日米両国は、より緊密に協力していくことで合意し、北朝鮮との対話の道は開かれているという共通の認識の下で率直に意見を交換した。 日本と北朝鮮の間で有意義な関係を確立するのは、日朝双方の利益にかない、地域の平和と安定に多大な貢献を果たす。北朝鮮との懸案事項を解決するため、首脳会談の開催を視野に入れつつ、私の指示の下、直轄のハイレベル協議を進めていく。こうした協議の進展を期待している。 ── 金正恩朝鮮労働党総書記と首脳会談を行う考えは? 現在、水面下でさまざまな協議を進めているが、残念ながら現時点では、進捗状況について詳細は明らかにできない。しかしながら、北朝鮮との懸案の解決に向けて、首脳会談を行う方向で努力を続ける。この点については、バイデン大統領とも意見を交換した。北朝鮮との対話の道は開かれているというのが日米の共通認識だ。いま申し上げたように北朝鮮との対話の道筋を探りながら、韓国など関係各国とも意思疎通を図っていきたい。 ──中国は日本の安全保障にとって最も懸念すべき存在とされている。日本が今、特に警戒すべきなのはどんな分野だと考えるか? まず東シナ海では、一方的な現状変更の試みが強まっている。わが国としては深刻な懸念を抱いている。日本は中国に対し、強く主張するべきことは主張し、日本の領土および領海空を断固として守る決意で、冷静かつ毅然として対処していく。 日本と中国はさまざまな可能性を共有しているが、一方で多くの課題や懸案も抱えている。中国は隣国だ。わが国は主張すべきことを主張するが、同時に対話を重んじる。共通の課題に対して、協力できるところがあれば協力する。このように双方が努力を重ねていけば、建設的で安定した関係が築かれるはずだ。 私の考えでは、日本も中国も、アジア地域と国際社会の平和と繁栄に極めて大きな責任を担っている。日中関係を建設的かつ持続可能なものにする政策を、私は一貫して掲げてきた。わが国は「互恵的な関係」を包括的に追求していく。いま申し上げたような関係の実現に向けて、中国との意思疎通を積み重ねていくこと。それが必要だと考える。 ──このところ米中関係は緊迫している。とりわけ台湾をめぐる情勢はそうだ。台湾有事が現実のものとなった場合に日本が果たし得る役割について、何らかの決定はあるか。 台湾に関して、今は、台湾有事という仮定の質問に答えることは差し控えたい。しかし、ここで言っておきたいのは、台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障のみならず、国際社会の安定にとっても重要であるということだ。 台湾をめぐる問題については、対話を通じて平和的に解決されることを望んでいる。それが今までの、そしてこれからも一貫した日本の立場だ。今回の訪米ではバイデン大統領に、台湾海峡の平和と安定が重要だと強調し、中台間の諸問題については平和的な解決を促していくことを確認し合った。 この点を中国側に、ダイレクトに伝えることが大切だ。先日は初の日米比首脳会談も行った。フィリピンをはじめ、志を同じくする国々と協力し、いま申し上げたような立場を中国側に明確に伝えていきたい。