新興国市場は低迷続く、来年も期待できず-完全撤退検討する投資家も
トランプ氏が中国からメキシコなど新興国に対して関税を課すと公約していることを受け、ブロード・リーチのブラッドリー・ウィッケンズ最高経営責任者(CEO)は、こうした下落は始まったばかりである可能性が高いと指摘する。
債券投資家にとっても状況はほとんど変わらない。23年10月以降に世界のマネーマネジャーが来たるべき米利下げに向けてポジションを構築し始める中、多くの投資家が新興国の現地通貨建て債券のアウトパフォーマンスに賭けてきた。米金利低下によって新興国の利下げが支えられるというのがその理由だった。
しかし、それは二つの点でうまくいかなかった。まず、多くの新興国は、根強いインフレ懸念やトランプ氏の関税計画といった新たな脅威によって、金融緩和サイクルを開始もしくは継続することができなかった。その上、新興国の現地通貨建て債券は、先進国市場のより安全な資産のパフォーマンスを下回った。
投資運用会社グランサム・マヨ・バン・オッタールー(GMO)は今年に入り、新興国の現地通貨建て債券について「一世一代」の買いの好機だと指摘していた。しかし、ブルームバーグの指数によると、新興国の現地通貨建て債券の年初来リターンは2%にとどまり、米ハイイールド社債の8%など、他の債券のパフォーマンスを下回っている。
JPモルガンのグローバルマクロ調査責任者、ルイス・オガネス氏によれば、米金融当局が9月に利下げを開始した時、3年間に及ぶ新興国特化ファンドからの資金流出が終了するとの期待が高まっていた。
しかし、11月のトランプ氏大統領選勝利でその期待は打ち砕かれた。バンク・オブ・アメリカ(BofA)がEPFRグローバルのデータを引用して指摘したところによると、今年に入り新興国特化の債券ファンドから230億ドル(約3兆6000億円)が流出している。
オガネス氏は「25年には新興国市場への資金流入が再開されることを期待していたが、現在の不確実性を考えると、米金融当局が利下げを開始したとはいえ、その可能性は低い」と分析。現時点では「新興国特化ファンドからの資金流出を予想している」とし、資金を呼び戻すには「米利下げだけでは不十分だ」と述べた。